地を鹿の子絞りとし、模様部分を染め残し、その上に刺繍を施した豪華絢爛な振袖。No.29《鼠縮緬地石橋模様振袖》と同様に石橋を主題としているが、画面いっぱいに動き回る多数の獅子や、肩から裾に向けて大きく流れ落ちる滝、咲き乱れる牡丹の花は強烈で力強い印象を与える。近世には直接的な表現を避ける傾向にあった獅子が、本作品には惜しみなく描かれている。作者の三代中川華邨は戦前・戦後に活躍した三代田畑喜八や上野為二、土屋素秋と並ぶ京友禅の名工であり、大胆で斬新な構図と配色で友禅染の近代化を推し進めた一人である。
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