皮胎(ひたい)に黒漆塗りの深盆。朝鮮王朝時代に流行しためでたい文様がところ狭しと螺鈿で描かれている。見込みには桜樹の下で、子孫繁栄をあらわした大小8匹の魚が群遊し、胴回りの内側には笹竹と梅樹、外側には仙桃に双鶴、水中双亀、松に双鹿、月に双兎、蓮池水禽などが描かれている。その螺鈿文様もさらに写実性を高めるために、毛彫りで魚鱗を描くなどしている。使われている貝の大きさはこれまた朝鮮王朝後半の特徴である面積の大きい貝から文様の単位を切り抜いている。この種の深盆のなかではもっとも装飾的で、名品である。
【ID Number1998B00240】参考文献:『福岡市博物館名品図録』