人物行列文壷
1500年頃 ヴェネチア
宙吹き、エナメル彩、金彩
球形の胴部に、円錐形の首部、胴と一体化した高台部よりなるコバルト・ブルーの小壷。上下部に美しい点彩と金彩で縁取りを施し、胴部に、イタリア・ルネサンス時代のコスチュームを身にまとった男女の行列文が描かれている。白馬に乗ったエンジェル、笛を吹く童子など合計34名の人物が、祭りらしい風船飾りのついた屋外を歩いて行く姿が描かれている。もともと、ヴェネチアのエナメル絵付けは、イスラム・グラスの技法を導入し、ビザンチンの影響もうけて、当初は点彩文様の作品だけが作られていたが、15世紀末頃より、ヴェネチア派の画家の影響を受けて、人物表現が導入されるようになった。エナメル絵付け作品には、記念の祝賀図や祝祭図、記念坏としてふさわしい勝利の女神や神話図などを描いた祝坏形のものが多かった。こうした風俗図に近い絵を、小壷に描いたものは稀で、現存しているものも少ない。エナメル絵付けの表現は稚拙ながら、職人芸らしい丁寧な描写で、のどかな民衆の祭りの風情が、見事に描き出されている。