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貧困に苦しみ、世間の無理解に傷つきながら放蕩を繰り返し、悲劇的な最期をとげる、いわば「呪われた画家」の多いエコール・ド・パリの作家の中にあって、唯一の例外とも いえる存在がキスリングである。ポーランドに生まれ、19歳でパリに出た彼は、その2年後には早くも画商と契約を交わし、経済的にも恵まれた生活を送った。また、その持ち前 の陽気で開放的な性格によって多くの友人を得、夜ごと繰り広げられるパリのお祭り騒ぎ の中心人物となり「モンパルナスの王者」と呼ばれた。この肖像が描かれた前年、キスリ ングは初の個展を開催したが、これが大成功を収め、早くもその名声を決定的なものにし ている。
モデルは5年前に結婚した彼の妻ルネ。彼女はしばしば夫の絵のモデルをつとめている。 この作品は、キスリングがみずからの画風を確立しはじめる時期のもので、量感の強調, 単純化された背景、そして何よりもなめらかで光沢のある画面の質感が、紛れもないキス リング様式の始まりを告げている。ふたりの結婚生活は、お互いの理解と信頼に満ちた幸福なものであったという。「祝福された画家」キスリングは、家庭にあってもまた良き夫、良き父であった。
(出典: 『名古屋市美術館コレクション選』、1998年、P. 25.)

詳細

  • タイトル: ルネ・キスリング夫人の肖像
  • 作成者: キスリング
  • 作成日: 1920
  • 実際のサイズ: 73.7×54.6 cm
  • 来歴: 1987年購入
  • タイプ: 絵画
  • 権利: 名古屋市美術館
  • 媒体/技法: 油彩・キャンヴァス

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