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ルノワールは読書をする女性をしばしば描いている。なかでも最も有名な作品はオルセー美術館にある《読書する女》(1874年)で、ふっくらとした頬の若い娘マルゴが反射する光の中で一心に本を読み耽っている絵である。ここでは画家の興味は明るい日差しを受けて輝く彼女の顔で、まばゆいほどに光を吸い込むような肌に正面からハイライトを当てている。
それに対して本作の方は、斜め横から後ろ姿を捉えたもので、モデルの女性の顔も名前も分からない。ソファーに裸足で腰掛け、着衣の白いブラウスがはだけて左肩があらわになっているが、彼女は読書に夢中で他人の視線を気にする様子は全くない。肩から白い肌が見えている女性というのはルノワールの作品で時折見かけるものである。部屋の壁には大きなタピスリーのようなものが飾られ、その絵柄には半裸の女性らしき図像が見える。赤、白、黄、緑、青など、純粋な色相のみを採用し、全体的に暖かみのある配色にまとめられている。この女性だけが占有する時間と空間の中に画家が入り込み、のぞき見たような印象を与える作品で、親密な雰囲気を漂わせている。
読書する人物のいる室内の情景は、マネやモリゾらの手によっても繰り返し描かれているように、当時のパリにおいては「新しい光景」「近代的な風俗」であり、印象派の人物画家が好んで取り上げた主題のひとつであった。

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