バタシー発電所は、南西ロンドンのインナーシティ地区、バタシー・ナイン・エルムズのテムズ川南岸にある、廃火力発電所である。1つの建物に2基の発電所が備えられた施設で、建設は2段階を経て行われた。バタシーA発電所は1930年代に建設され、その後1950年代になってから、東側にバタシーB発電所が建設された。2つの発電所はほぼ同じデザインで建築され、4本の煙突が長い間市民に親しまれた。この施設での発電は1983年に終了したが、廃炉までの50年以上ロンドンのランドマークのひとつとして知られたほか、現在ではグレードII* の指定建築物 となっている。建物は多くのポップ・カルチャー利用を受けていることでも知られ、ピンク・フロイドが1977年に出したアルバム『アニマルズ』のカバーや、ビートルズが1965年にリリースした映画『ヘルプ!4人はアイドル』で姿を見ることができる。
発電所は世界最大のレンガ建築物のひとつであり、豪華なアール・デコ式内装で有名である。建物はその閉鎖以来ほとんどが使われずに放置されていたため、構造の状態が悪化して、イングリッシュ・ヘリテッジに "very bad"と評価されたほか、危機に晒されている建造物のリストである "Heritage at Risk" に登録された。またワールド・モニュメント財団によって、危機に瀕している建造物を登録するワールド・モニュメント・ウォッチの、2004年版 ・2014年版 にも登録された。
発電所閉鎖以来、多数の再開発計画が発電所を引き継いだオーナーたちから立案されたが、どれも失敗に終わった。2004年には、香港に本社があったパークビュー・インターナショナル の再開発計画が頓挫している。この後発電所は、2006年11月にアイルランドの会社、リアル・エステート・オポーチュニティーズ へ4億ポンドで売却され、会社は発電所を公共利用して、この場所に3,400軒の住宅を建てる計画を打ち出した。この計画は、REOの債務が英国やアイルランドの銀行から回収されたことから頓挫し、2011年12月に、発電所の土地は総合不動産コンサルティング会社のナイト・フランクによって、不動産市場に売りに出された。この売却提案には海外の様々な合弁企業も興味を示したが、多くは建物の全面的ないし部分的な取り壊しを期待していた。総額7億5,000ポンドに膨れた負債と、ロンドン地下鉄延伸に必要な2億ポンド、荒廃していた発電所屋根の保全に必要な資金、川岸のゴミ集積工場 やセメントプラントの存在から、この場所の商業的発展は、大変な挑戦でもあった。
2012年6月7日、ナイト・フランクは、管理者のアーンスト・アンド・ヤングがマレーシアの企業、SPセティア・サイム・ダービーと完全合意し、発電所や関連する土地の迅速な引き渡しとその履行に向けて作業を開始すると発表した。