庶民に愛された漆器

紀州漆器の起こり
室町時代後半に、木材から椀を削る集団が黒江に移り住み、豊富な紀州の桧を使い木椀の製造を始めたことが紀州漆器の起源と言われています。元禄元年(1688)に刊行された『毛吹草』に「紀伊黒江渋地椀」とあるのが最も古い記録です。正徳2年(1712)刊行の『和漢三才図会』では紀伊の名産品として紹介されています。
紀州漆器の発展
紀州漆器は庶民が使用する漆器として発展しました。高価な漆器では下地にも漆を使いますが、紀州漆器では安価に抑えるため、下地に漆ではなく、柿渋や膠を使います。江戸時代の中ごろまでには生産が分業化され、生産力が向上しました。こうした工夫が安価な大量生産を可能にし、紀州漆器は庶民の生活に広く受け入れられたのです。
紀州漆器の隆盛
初期の製品は椀が中心でしたが、1800年代には、重箱や盆なども作られ始めました。装飾面でも、天保年間(1830-1844)に金粉や銀粉を使って装飾する蒔絵技法が導入されました。1840年頃の黒江には約5000人が住んでいたと言われ、藩の保護もあり黒江は漆器の大生産地となったのです。
紀州漆器の変動期
紀州漆器は明治時代(1968-1912)に海外に販路を広げます。明治16年(1883)には日本から輸出された漆器の57%が紀州産でした。新しい技術の開発も進み、漆の塗面を刀で彫り、金箔や色粉を沈めて模様にする沈金が導入されました。更にデザインの研究も行われました。
紀州漆器の現在
海外輸出額は明治時代の中ごろをピークに衰退を続けてきました。昭和53年(1978)に「経済産業大臣指定伝統的工芸品」の指定をうけました。近年は消費者のライフスタイルの変化・消費者ニーズの多様化などにより漆器製品の需要は減少しています。職人の高齢化も進み、若い技術者の確保と育成が求められています。
漆器に用いられる漆は、ウルシの木の幹を傷つけて採れる樹液を原料としています。一本の木からとれる漆はわずかで非常に貴重なものです。
根来塗
根来塗は、和歌山県にある根来寺を由来とする漆器です。使い続けるうちに上塗りの朱の漆がとれて、下塗りの黒漆が現れます。この自然な模様に美しさを見出した根来寺の僧が、故意的に上塗り部分を研ぎだした漆器を作るようになったことが、根来塗の始まりとされています。紀州漆器は焼打ちに遇った根来寺の僧が黒江に逃げて来て始まったとする説も存在します。
木地
目的に応じて様々な大きさに削られた木地は、完成品に形の歪みが生じないように、数年間をかけて乾燥します。
下地塗り
下地塗りは、水漏れを防ぎ、美しく上塗りをするための大切な作業です。下地や漆を何度も塗り重ねて手間を掛け、紀州漆器は出来上がります。
漆を和紙で濾す
上塗りに用いられる漆は、まず吉野紙と呼ばれる和紙で濾して、不純物を取り除きます。
上塗り
漆を何度も塗り重ねては研ぎ出します。漆を塗る刷毛には女性の髪の毛が一番良いとされてきました。
加飾工程
上塗りが完成すると、製品によっては、蒔絵や沈金技法をもちいて様々な装飾が施されます。

「粉筒(ふんづつ)」と呼ばれる、蒔絵の道具。金銀粉を蒔く際に用います。

「粉筒(ふんづつ)」と呼ばれる、蒔絵の道具。金銀粉を蒔く際に用います。

螺鈿技法に使われる貝殻。漆をつかって作品の表面に張り付けます。

螺鈿技法に使われる貝殻。漆をつかって作品の表面に張り付けます。

黒江の町並み
紀州漆器の生産地として栄えた黒江の地は、現在でも昔の面影を残す町並みが残っています。
黒江はかつて海に面しており、紀州漆器は海上輸送によって出荷されていました。現在でも、金毘羅権現(航海の安全の神様)の社が残るなど、その名残が伺えます。
紀州漆器まつり
紀州漆器と黒江の町並みを生かしたまちづくりを推進する目的で、平成元(1989)年から毎年11月に開催されています。天候に恵まれれば、6万人にも上る人出で賑わいます。
紀州漆器の情報発信
紀州漆器伝統産業会館 うるわし館では、紀州漆器の展示・販売を行っています。また、漆器蒔絵の体験や、伝統工芸士の実演など、紀州漆器について学ぶこともできます。
京都女子大学 生活デザイン研究所
提供: ストーリー

【資料提供】
紀州漆器伝統産業会館 うるわし館

【協力】
和歌山県商工観光労働部企業振興課

【撮影】
・前﨑信也 (京都女子大学 准教授

【英語サイト翻訳】
まい子・ベア

【テキスト・サイト編集・制作】
・升田真帆(京都女子大学文学部国文学科
・杉島つばさ(京都女子大学 生活造形学科

【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也 (京都女子大学 准教授
・山本真紗子(立命館大学)

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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