涼を運ぶだけでなく、祭事や芸能にも欠かせない道具

「扇子」は、手にもって振り風を送る道具です。日本では平安時代ごろより貴族・僧らの服飾品や儀式用品として用いられてきました。また、能楽・狂言・落語や日本舞踊といった芸能、茶道などでも重要な役割を果たします。
扇には檜扇(ひおうぎ)と紙扇(かみせん)、絹扇(きぬせん)の三種類があります。檜扇は檜や杉を長さ30㎝以上、幅約3㎝以上の薄い板にし、その上部に二つまたは数個の孔をあけます。下部には一つ穴をあけて要でとめ、板を編み綴じて開閉できるようにものです。
9世紀ごろ、日本で「扇(おうぎ)」が発明されます。最初に檜扇の形状が生まれ、程無く扇骨の片側に紙を貼り付けた蝙蝠扇(かわほりおうぎ)が誕生しました。10世紀には中国大陸にも輸出するようになり「倭扇(わせん)」と中国大陸で呼ばれていました。14世紀に、片面貼りであった日本の扇に裏面から紙を貼り付け、両面貼りにする工夫が中国大陸でなされ日本に逆輸入されました。これは唐扇(とうせん)と呼ばれ、そこから末広(中啓)、雪洞(ぼんぼり)、鎮折(しずめおり)と呼ばれる三つの形式が生まれます。
扇塚
明治時代に入ると、万国博覧会への出品をきっかけに欧米へ輸出されるようになり、のちには中南米などにも販路を拡大します。女性向けの極彩色のデザインや華やかな装飾が人気となりました。20世紀前半に貿易不況となると、この貿易扇が国内向けとなり、今日の扇骨の多い紙扇の形態をつくりあげました。
扇子の生産工程は、大きくわけて、扇の骨づくり、扇面づくり、そして両方をあわせて仕上げる工程の三つにわかれます。それぞれに専門の職人さんが仕事をおこなう「分業制」をとっています。大まかに20工程以上、細かくわければ80以上の工程があります。
まずはじめは扇骨(せんこつ)づくりです。アクを抜いて決まった幅と長さに割り出した竹を薄く削り、竹の厚みを整え、骨の原型をつくります。
「目あな」と呼ばれる骨を束ねる穴を、舞錐(まいぎり)とよばれる専門の道具をつかってうがちます。「目あな」に串を通し何百枚もまとめ、二、三日水につけてやわらかくします。その後「あてつけ」といって、湿った骨の表面を「脇かき」とよばれる特殊な形の包丁で削り、骨のかたちにしていきます。青味をとり乾燥させるため天日干しし、猪の牙でできた「猪牙(いのき)」で磨きます。その後、色付けをしたり、塗や彫などの装飾を加えます。
火鉢でやいたハシを使って、扇骨をまとめておくための要(かなめ)を打ちます。昔は鯨の髭を通していましたが、今はプラスティックなどが使用されています。そのあと、地紙の中にいれる部分(中骨・なかぼね)を薄く削ります。
次に扇面となる地紙の加工です。扇の紙の部分は、夏扇子では3枚、舞扇では5枚ないし7枚の和紙を糊で貼り合わせて作ります。芯紙と呼ばれる薄い和紙を真ん中にして、表と裏に皮紙とよばれる紙を貼ります。貼り合わせ乾燥させたのちに、型をあてて、扇の形に切り抜きます。
扇面の表面に絵を描き装飾をほどこします。上絵を描く場合は、膠をまぜた絵具で描いていきます。描いた絵が曲がっておかしく見えないよう、扇面にできる折り目の場所を考えながら模様を描いていきます。手描き以外にも、型紙や木版をつかった技法など様々なものがあります。さらに金箔や砂子を載せるなどして、華やかに仕上げていきます。
骨と合わせるために、地紙に折り目をつけていきます。地紙を湿らせ、折り型で挟んで端から折りたたんでいき、折り目をつけます。何枚か重ねて折り目の上から拍子木で軽くたたき、形をととのえます。湿気が残っているうちに木枠に入れて数時間置き、その後取り出して乾燥させます。
中骨を指すための空洞をつくります。真ん中の芯紙を竹べらで上下に割り、扇の中骨の入る口(くち)をあけます。折り目ごとに地紙にヘラをぐっとつきさし、骨の入るための隙間をあけます。骨の数だけ隙間があけられたら、拍子木でたたいて形をととのえ、万切り包丁という大きな包丁で決まった大きさにカットします。
次に、扇の紙のなかに骨を入れられるよう、地紙の端に自分の口をつけて、中差しであけた空洞に息を吹き込み、穴をひろげます。これを「地吹き」と言います。穴が開いたら、あらかじめ糊をひいた中骨をそこに差し込みます。小さな穴に骨を差し込む、熟練の技術が必要とされる工程です。
十分ほど乾かした後、形をととのえ拍子木でこなし、親骨の先を切りそろえます(親切り・おやぎり)。万力に一晩かけて、紙と骨を密着させ折り目を定着させます。さらに火であぶり温めた親骨を内側へ曲げる「親ため」という作業を行います。これをすることにより、閉じた時のしまりがよくなり、ぱちんというよい音がするようになります。最後に親骨を貼って乾燥させ、完成です。
扇骨の製造、扇面の製造および仕上げの三工程が京都およびその周辺で出来上がった扇子のみが「京扇子」と名乗ることができます。
京都女子大学 生活デザイン研究所
提供: ストーリー

【資料提供】
株式会社宮脇賣扇庵
有限会社十松屋福井扇舗
・株式会社伊藤常
・清水能信(伝統工芸士)
・米原伸治
・米原康人

【監修・協力】
京都扇子団扇商工協同組合

【テキスト】
・山本真紗子(立命館大学)

【写真】
桑島薫

【英語サイト翻訳】
・エディ・チャン

【サイト制作・編集】
・内藤有紀枝(立命館大学文学部人文学科)

【プロジェクト・ディレクター】
・山本真紗子(立命館大学)

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
Google で翻訳
ホーム
トピック
現在地周辺
プロフィール