色彩のファッション ―白―

京都服飾文化研究財団

無垢な色
無罪、処女性、浄化、衛生。白が象徴するものの多くは「純粋性」と結びついています。色が染まる前段階の無垢な状態。汚れやすい純白のドレスを纏うことは一種のステイタスでもありました。

新古典主義と白

1789年のフランス革命と前後して、ロココの華やかな色彩の豪奢なドレスの流行は、白く簡素なドレスへと変化します。ラウンド・ガウンは、19世紀初頭に熱狂的な勢いで流行する白いモスリンのドレスへの移行期に流行したハイ・ウエストのワンピース・ドレス。

古代ギリシア・ローマの彫像を思わせるハイ・ウエストのドレス。肌が透けて見えるほど薄い白の綿モスリンで作られたドレスは、シュミーズ・ドレスと呼ばれ、19世紀初頭のファッションを特徴づけています。

ハイ・ウエスト。後部にたっぷりとギャザーが寄せられ、スカートは長いトレーンをひく。まるで下着のような白いシュミーズ・ドレスは、当時の新古典主義の思想と同調し、革命後の新しい美意識と価値観を求める女性達の心をつかみました。

薄い綿のドレスが広く流行すると、フランス経済の重要な担い手であったリヨンの伝統的な絹織物業は壊滅状態に陥りました。その復興のため、ナポレオンは宮廷における絹の着装を勧めるべく、1811年、公的儀式の際には男女ともに絹の着用を命じる勅令を出します。

婚礼の色

従来、西洋では婚礼は、今日のように白色に限らず、最も高価な流行の服を着用していました。19世紀以降、純潔を意味する白系統の色が主流となります。レースやチュール製のベールも流行し、19世紀後期には巨大化して花嫁の全身を包みました。

高価な色―レース―

オーガンジーに植物模様の3種類のバランシエンヌ・レースがはめ込まれている。汚れやすい白、そしてドレスに施された装飾は、有閑階級しか身に着けることができませんでした。

オーガンジーに植物模様の3種類のバランシエンヌ・レースがはめ込まれている。使用されたレースは約50m。
本品はプリンセス・スタイルのドレス。縦の切り替え線のみを使ってウエストをフィットさせ、バストやヒップを強調するシルエットで、後にイギリス王妃となるアレクサンドラが好んで着用したことに因んでいます。

シフォンの薄く柔らかな素材でこの時期の流れるようなラインが魅力的に表現されています。その上にレースや軽やかな薄絹の装飾をふんだんに施したベル・エポック期の典例です。

白一色の夏用ドレス。レースや刺繍、アップリケによる立体的な草花モチーフの装飾がふんだんに施されています。アール・ヌーヴォー期には、流れるような曲線と自然をモチーフとした装飾が尊ばれました。

立体的なレースで編みあげられたドレス。アイリッシュ・クロッシェ・レースと呼ばれる鉤針編みの技法です。スペインやヴェネツィアのニードルポイント・レースを手本に、1850年代からアイルランド南部の修道院を中心に作り始められました。当初は衿やカフスにあしらわれていたが、1905年から10年頃、総レース仕立てのドレスがヨーロッパで制作され、流行します。

始まりの白―20世紀初頭―

ディレクトワール(フランス革命後の総裁政府)時代のファッションを彷彿させる簡潔なシルエット。女性服がコルセットから解放される過渡期のスタイルです。

ハイ・ウエストでシンプルなシルエットと柔らかい素材使い、前時代の人工的な造形から解放されたゆったりとしたラインは、18世紀末から19世紀初頭へのダイナミズムを髣髴とさせます。

グレのプリーツ・ドレス

細かいプリーツが胸のラインを構成し、布の自然な流れがスカートに。グレは1930年代半ばからシームを最小限におさえるために非常に幅の広い薄い絹ジャージーを用い、古代ギリシアの女性服を思わせる細かいドレープのドレスを作り始め、定評を得ました。

1960年代―若さの白―

クレージュの代表作であるミニ・ドレス。1962年頃、マリー・クワントによって注目され始めたミニ・スカートは、65年、クレージュにより初めてオートクチュールの世界に持ち込まれました。脚、そして透けて見える腹部は、ボディコンシャスな方向が明快に示されています。

60年代は、若さというキーワードを軸に、新しさや清潔なイメージがより高い価値を獲得していきます。クレージュの白は、常に真新しさへの憧れを人々に与え続けました。クレージュは1963年からパンツ・スタイルを発表し続けました。

1980年代―無彩色の白―

日本人デザイナーの山本耀司と川久保玲は、1980年代はじめ、無彩色、ぶかぶか、アシンメトリー、意識的な穴や破れを施した、西欧の既存の美意識を覆す作品によってパリで賛否両論を巻き起こした。このとき山本は「一生に一着しかない服が生活していくうちにはぎ合わされ、日や雨にさらされ、ほつれていく、無意識の美、自然の美しさを持つ服を作りたかった」と述べた。

川久保の初期を代表する一点。複雑に交差するセーターは、基本的に直線のパネルで構成されて、力強い量感を示しています。たっぷりとしたゆとりは、左右に広げた袖は着物の袖のよう。スカートは、セーターのゆとりやたるみが生み出す不定型な形に呼応して、アシンメトリーにたわんでいます。

デコルテの美しい優雅なロング・ドレス。地の目に沿った布使いで、布を身体に沿わせながらねじり、巻き付けた独自の構成。ダーツやカットといった従来の技法は使われていません。服作りに抜群の技術を持つ山本らしい作品です。

下着の白


下着が表着化したファッションは、ボディ・コンシャスへの志向が再熱した1980年代からみられます。1990年代後半、キャミソールやスリップを表着にしたトップやドレスがグッチやプラダなどの高級ブランドから次々と提案されました。下着は見えないという意識は変わっていきます。

伝統と革新の色

一見しただけでは刺繍とも織物とも判別し難い現代的なテクスチャーを持つ表面は、コード刺繍の技法を用いて制作されました。手掛けたのは世界的に有名な刺繍のアトリエ「ルサージュ」。伝統的な技法を用いながらも新しい感覚を取り入れた職人の手仕事による逸品。

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
Google で翻訳
ホーム
トピック
現在地周辺
プロフィール