1945年(昭和20年)8月6日、一発の原子爆弾により、広島のまちは一瞬にして廃虚と化しました。大量の放射線を浴び、体を焼かれ、多くの人々が苦しみながら亡くなっていきました。 人から伝え聞いた弟の最期の言葉、ひん死のわが子がつぶやいた言葉、最期に発せられた言葉は、時を経ても、遺族の心から消えることはありません。  数多くの遺品には、遺族の「こんな思いは誰にもしてほしくない」、「原爆も戦争も、あってはならない」との切なる思いが込められています。 

「これを宮島の家族へ渡して下さい」

片足が崩れ落ちた駅の梁に挟まった弟は、生徒手帳と定期入れを自分の身代りに差し出して、意識があるまま焼かれてしまった

定期入れ 寄贈/船附 小子氏  所蔵/広島平和記念資料館

気を失うことも逃げることもできず、もう駄目だと思わなければならなかった弟は「これを宮島の家族へ渡して下さい。」と生徒手帳と定期入れを身代りに差し出し、最後となった言葉を横川駅へ置いたまま燃え上がった構内で意識があるまま焼かれてしまった。

燃え狂う、この生地獄で息絶えるまでどんなおもいでいなければならなかったか。原爆が投下されなかったら、そして、汽車が遅れなかったら足首が―片足だけが挟まらなくてもいいではないか、まして、切り落す鋸さえあったら生きたまま焼き殺されなくてもいいではないか。

船附小子氏の子・船附洋子氏作「鋸」から

「お母さん お水ちょうだい」

やっとの思いで水をくんでもどると、娘は死んでいた

靴下 寄贈/川向 榮子氏 所蔵/広島平和記念資料館
風呂敷  寄贈/川向 榮子氏 所蔵/広島平和記念資料館

あちこちと捜していると、安芸高等女学校の動員学徒は川土手の下にいたと聞き、そこへ向かった。現場には無残な姿の子どもたちの真っ黒い顔が並んでいた。

「節ちゃん、節ちゃん」と呼びながら捜していると、フィリピンのダバオで買ってやった、当時の日本では珍しいシュミーズを見かけ、よく見ると「太田」と名前が書いてあった。その子に話しかけると、「お母さん」と返事をした。

節子が「お水ちょうだい」というと、まわりの息がある子たちも次々と水をねだるので、「がんばるんよ。すぐくんでくるよ」といってすぐに水を探しに行った。

なかなか水を見つけることができず、死に物狂いで探しまわった。

やっと水をくんで戻ると、みんな亡くなっていた。「ごめんね。ごめんね。」といって皆の口を水で濡らしてやった。

母・ヨシミさんが語った話から

「アイスキャンディ下さい お金がないから貸しといて」

主人が五十銭の札を握らせて「これで買って食べよ」といっていましたが、安らかに眠ってしまいました

半ズボン 寄贈/満田 義忠氏  所蔵/広島平和記念資料館

八月十一日 二朗はいよいよ容体が変わってしまった。

呼吸も細っていく中でかすかに「アイスキャンディ下さい お金がないから貸しといて」と、言っていました。

主人が五十銭札を手に握らして「これで買って食べよ」と言っていましたが、だんだん静かになり、午前九時過ぎ、皆に見守られて安らかに眠ってしまいました。

自らの死も知らず「母を助けて」と近所の人々に頼み、水をくんで崩れた階段をのぼり、二階まで運び、火を消してくれたり、精一杯の事をして死んでゆきました。

母・勝子さんの手記「原爆記」から

二男の遺体を焼く  満田 義忠氏  所蔵/広島平和記念資料館

「お父さんが待っている」

生後すぐに亡くなった顔も見たことのない父のことを言いながら息を引き取りました

ケイスウキ(計数機) 寄贈/天野 廉氏  所蔵/広島平和記念資料館
絵  寄贈/天野 廉氏 所蔵/広島平和記念資料館

「僕は世界を一周する 今日は行かぬ 明日行く」とうわ言を申しました。ああやっぱり助からぬのだと母と二人でかわいそうにと思いあって泣きました。(中略)

学校の事はもう心配しないで早く良くなるようにと言って聞かせました。やっと気も落ち着きましたが、またまたうわ言に「お父さんが待っている」と申しました。

平素はお父さんといった事のないのにやはり父の霊が迎えに来られたものと思いました。(父・静夫(しずお)さんは、保義さんが生まれた年に亡くなっている。)そのまま息を引き取りました。その時の一同の悲しさと何といって良いかも生きがいもない真っ暗やみになったようでした。ただ泣けて泣けて仕方がありませんでした。

ただあの子を楽しみにして生きていましたのに当分は自分の体ではないよう、ふらふらしていました。

母・良子さんが書き残していた手記から

提供: ストーリー

contributor — Sayoko Funatsuki, EIko Kawamuki, Yoshitada Mitsuda, Kiyoshi Amano,
Creator — Yoshitada Mitsuda

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