竹工芸の歴史と飯塚家
室町時代、中国から煎茶と共に日本に渡来した竹工芸品は、江戸末期から明治にかけて、煎茶の隆盛と共に「唐物籠(からものかご)」として珍重されました。当時「籠師(かごし)」と呼ばれた職人たちは、精緻な技巧を凝らした唐物籠の写し(コピー)を制作していました。しかし時代と共に、独自の作風の籠を制作し、それまで無銘であった作品に自らの銘(名前)を刻む竹工芸家が関西、関東を中心に現れました。そのひとつが栃木の飯塚家です。
大正天皇に籠を献上
栃木市で名を馳せていた飯塚家は1910(明治43)年、一家で上京します。1915(大正4)年には初代鳳齋(鳳翁)(1851~1916)、二代鳳齋(1872~1936)、弥之助(琅玕齋)(1890~1958)が、大正天皇即位の際、大嘗祭に用いられる神服を収める《神服入目籃》一対を謹製しました。
芸術としての竹工芸を目指した琅玕齋は、帝展など公募展に出品して受賞を重ね、1939(昭和14)年、第三回文部省美術展覧会において竹工界初の審査員に就任、近代竹工芸界の第一人者となりました。1933年、日本を訪れていたドイツの建築家ブルーノ・タウトは琅玕齋宅を訪れ「西の田邊竹雲齋、東の飯塚琅玕齋」と称え、琅玕齋の作品を評しました。品格あふれる彼の作風は子息・小玕齋(しょうかんさい)(1919~2004)に受け継がれ、1982年には小玕齋が「竹工芸」で重要無形文化財保持者に認定されました。
琅玕齋から現代へ
現在、栃木県では大田原市を中心に多くの竹工芸家が活躍しています。大田原市を含む県北の那須地域は、寒暖差のある気候と那珂川が運んできた肥沃な土壌によって、工芸作品向きの節間の長いしなやかな竹が育つことで知られてきました。日用の笊籠類の需要が多い中、竹工芸の成立の素地を作ったのが、二代飯塚鳳齋に師事した黒羽町(現大田原市)出身の鈴木峰齋(ほうさい 1905~1982)、それをさらに推し進めたのが八木澤啓造(やぎさわけいぞう 1927~2006)です。彼の工房からは、中央の公募展で活躍する作家たちが輩出しました。
そして今、重要無形文化財「竹工芸」の保持者として、栃木県在住の勝城蒼鳳(1934~)と藤沼昇(1945~)が認定されています。人間国宝の制度が始まって以来、竹工芸で1県から2名が認定されるのは初めてのことで、栃木の竹工芸の水準の高さを示しています。
竹工芸の魅力― 「真・行・草」三態の作風―
琅玕齋は竹工芸の品格を示すために、「真・行・草」三態の作風を制作しました。公募展等には緻密な編みで古典的な風格をもった「真」を、個展には自由な編み方による「行」や「草」を出品しました。さらに琅玕齋は、多くの作品に銘を付けています。その卓抜した技によって形と銘によるイメージを見事に一体化させ、創造性豊かな竹の芸術作品を生み出していきました。
「真」の籠
「行」の籠
「草」の籠
制作工程: 皮むき
竹工芸は竹ひごを作るところから始まります。まず、防虫のため油抜きをした真竹の表皮を、銑(せん)という道具で薄く削ります。厚みはわずか0.1㎜。汚れが取れ、竹が染まりやすくなります。
割り・剥ぎ
鉈(なた)で縦半分に割っていきます。細くなるにつれ鉈も刃の薄い鉈に変えます。節の内側もはらいます。次に内側の部分を剥いでいきます。竹ひごに使用するのは表皮側のみで、内側は繊維がもろいので捨ててしまいます。
ひごの割り方には「柾割」と「平割」があります。柾割は竹の中心に向かって縦に割っていくもので、硬めの関東の竹が向いています。一方平割は竹の中心に向かって横に割っていくもので、2種を併用することで表現の幅が広がります。 
幅決め 
銑の間にひごを通して幅を均一にします。幅は編む籠に合わせて調整しますが、概ね2㎜のひごにします。節を削り4等分に割ります。銑の間を通し、皮と身を削って厚さを約0.4㎜そろえます。
竹ひごの色
作品によってはムラ染めを防ぐため、ひごはあらかじめ染料で先染めしておきます。勝城氏は色はあまり染め分けず、編み方と光の変化で籠に表情を与えようとしています。
編み
籠は底から編んでいきます。この作品の底は見込と外底を別々に編み、最後に合わせる二重構造になっています。腰上げ(側面の立ち上げ)の部分は、ひごを湿らせ、立ち上がる部分に竹ひごを横に編み込んでから立てると角度が決まります。
縁(ふち)仕上げ
胴を編んだ後、染めた籐(とう)で縁をかがっていきます。乾燥に弱くなるので穴は開けず、編み目の隙間に通します。過剰装飾にならないよう、籐巻は最小限に抑えます。
摺漆
漆を灯油で割ったものを、刷毛で高台内から塗っていきます。全体を塗った後大きなブラシでならし、摺り込んでいきます。適度に湿度を保ちながら乾燥させ、この工程を4,5回繰り返します。「摺漆」は漆の塗りをみせるというよりも、竹の美しさを引き立てる技法です。
立命館大学アート・リサーチセンター 協力:京都女子大学
提供: ストーリー

資料提供: 飯塚万理、 斎藤正光、 栃木県立美術館 、栃木市

取材協力: 勝城蒼鳳

監修&テキスト: 鈴木さとみ(栃木県立美術館)

撮影: 大谷一郎、小川京一郎、如月萌、田中学而

編集: 山本真紗子(日本学術振興会特別研究員)、京都女子大学 生活デザイン研究所 坂下理穂 (京都女子大学大学院家政学研究科)

英語サイト翻訳: Eddy Y. L. Chang

プロジェクト・ディレクター: 前﨑信也 (京都女子大学 准教授

提供: 全展示アイテム
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