Avant-garde fashion: ANREALAGE

日本服飾文化振興財団

「REAL」(日常)、「UNREAL」(非日常)、「AGE」(時代)

ANREALAGEとは?
ANREALAGEはデザイナーの森永邦彦によって2003年に設立された。ブランド名は「REAL」(日常)、「UNREAL」(非日常)、「AGE」(時代)を組み合わせてつくられたものだ。現在まで続く約15年間の彼らの活動は服の特徴から大きく3つの時期に分けられる。第1期は2005 - 2006AW『SUZUME NO NAMIDA』から2008 - 2009AW『MUTYU』までの7シーズンで、この時期は「手仕事」へのこだわりという特徴がみられた。第2期は2009SS『○△□』から2011SS『AIR』までの5シーズンであり、第1期とは異なり、洋服の「かたち」を追求した時期であった。第3期は2011-2012AW『LOW』から2017SS『SILENCE』までの12シーズンである。この6年間で追い求められたのは「テクノロジー」をいかに洋服に落とし込むかであった。
森永邦彦
デザイナー森永邦彦。1980年、東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。バンタンデザイン研究所卒業。2003年、ブランド設立。ANREALAGEとは、A REAL-日常、UN REAL-非日常、AGE-時代、を意味する。日常の中にあって非現実的な日常のふとした捩れに眼を向け、見逃してしまいそうな些事からデザインの起点を抄いとる。「神は細部に宿る」という信念のもと作られた色鮮やかで細かいパッチワークや、人間の身体にとらわれない独創的なかたちの洋服、テクノロジーや新技術を積極的に用いた洋服が特徴。2005年、ニューヨークの新人デザイナーコンテスト「GEN ART 2005」でアバンギャルド大賞を受賞。同年、06S/Sより東京コレクションに参加。2011年、第29回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。2014年、15S/Sよりパリコレクションデビュー。2015年、フランス服飾開発推進委員会主催の「ANDAM fashion award」のファイナリストに選出。2016年、南青山にANREALAGE AOYAMAをオープン。

「神は細部に宿る」

ANREALAGEは数年単位で作風を変化させてきたが、彼らがつねづね口にする「神は細部に宿る」という信条は設立当初から現在に至るまで一貫している。各シーズンのテーマやコンセプトは生地やパターンやボタンなどの洋服デザインだけではなく、ブランドタグや品質表示、ショーの演出やシーズン毎にリニューアルされる旗艦店の内装デザインにまで反映させられてきた。
ANREALAGEにおいて「神は細部に宿る」とは、末端にまで意思が通ったこのような状態や第1期の「手仕事」にみられるような手間が醸した精神性を指している。そして「神は細部に宿る」というこの特徴を軸にしたANREALAGE理解は、日本においてはすでに「正統性のある理解」となっている。

「すこしふしぎ』

ANREALAGEの特徴をつかむには、あまり言及されないもう一つの特徴である「すこしふしぎ」にも注目しなければならない。

S F (Sukoshi Fushigi)

この言葉は森永が愛読するマンガ家の藤子・F・不二雄が自身の作品の特徴を表現するために用いたものだ。‘Science Fiction’と同じく略せばSFとなるが、未来などを舞台にして非現実的な世界が描かれる‘Science Fiction’とは異なり、マンガに描かれた「すこしふしぎ」の舞台はありふれた日常であり、そのなかのちょっとした不思議がとりあげられている。しかし、ANREALAGEの特徴をつかむには、あまり言及されないもう一つの特徴である「すこしふしぎ」にも注目しなければならない。

WIDE SHORT SLIM LONG

丸い服、身長約3メートルのマネキンが着てピッタリな服、面がなく骨組みだけで構成された服。こう書くと突飛な洋服を想像するかもしれないが、街中でこれらを着た女性が目に入っても、すぐにそれと気づく者はおそらくいないはずだ。ANREALAGEの洋服は日々の風景に意外なほどになじむからだ。

その一方で、すれ違う瞬間にふと違和感を覚える者も少なくないだろう。彼らの洋服は、ズレや霞み、ブレや錯覚といったすぐには言語化できないふしぎな感覚を見る者に与えるのだ。

藤子作品と同様に、ANREALAGEのつくる「すこしふしぎ」も日常を舞台としているが、マンガとは違いその舞台は現実の日常である。日常で着られる衣服は、公的あるいは暗黙のルールやマナー、さらには美意識などの規範から自由ではない。服づくりにおいて彼/女らが対峙しているのはこの日常である。それゆえ、彼/女らがつくる洋服は断じて純粋芸術を志向するものではない。視線の先にあるのは現実の社会であり、日常において洋服を着る人たちである。この日常への眼差しがもたらしたものが何かは、第2期から第3期の洋服を見ればわかるだろう。

第1期:手仕事
縫うことがもつ可能性を「手間」をかけることのみでどこまでひきだせるか。初期のANREALAGEが目指した洋服は、服づくりを志すものであれば誰もが一度は思い浮かぶものかもしれない。しかし、ただ想像するだけで、誰も作り上げようとはしない洋服でもあった。ANREALAGEは手を動かすことの価値を愚直に信じた。誰もができることでも、誰にもできないほどに繰り返すことで、誰も見たことがないものをつくりだせる。

ボタン

「祈り」をテーマとした2007SS。手間をかけ無数のボタンをぬいつけて、洋服づくりを祈りにみたてた。インビテーションには「起きる。食べる。着る。……壊す。迷う。思う。つくる。祈る。同じ明日がきますように。」と記されている。祈るとともに並ぶのは、だれもがいつもやっていること。
デザイナーになっていなければ公務員になっていたと答える森永の静かな振る舞いをうかがわせる文章ではあるが、この静謐な白いジャケットが「服の叫び」としてつくられたことは強調したい。ささやかな手間でも気が狂うほど重ねることで神秘的な迫力が宿る。ANREALAGEの「神は細部に宿る」という信念を象徴する洋服である。

パッチワーク

パッチワークは最初期から現在まで続くANREALAGEの代名詞のひとつである。はじめは森永が、その後つい最近までは彼の幼馴染だった真木大輔がたった一人ですべてのパッチワークを手掛けてきた。現在でも、ショーピースなどの細かなものはパッチワーク専門のアトリエで真木が縫っている。

第2期:造形:かたちを作りなおす
身長や裾丈における長さうや短さ。バストやウエストに置ける長さや太さや細さ。これらの人の身体を基準として定められた、長さ、短さ、太さ、細さは絶対的だろうか。身体という洋服における定規を問い直すこと。定規を買えない限り新しい洋服は生まれない。

『○△□』

ANREALAGE は2009SS『○△□』から洋服のつくり方を変えた。手仕事に向けてきた時間を考えることに向け、洋服のあらたなかたちをつくり出そうと試みたのだ。原型を使わない服づくりをはじめたのもこのシーズンであった。
その結果として最初に発表されたのが球体と正四面体と立方体の服である。(※ボールシャツの写真を掲載して)球体のというよりも、球体のための服に見えるかもしれないが、人がまとうと不思議なほどに違和感がない。
それは肩幅をきめるところから立体の大きさが決められているからである。たとえば立方体の洋服では立方体の一辺が洋服の肩幅となっている。重なるところがないと思える身体と立体に共通点を見出したことをきっかけに、ANREALAGEは洋服の新たなかたちを模索しはじめた。

『WIDESHORTSLIMLONG』

2010-2011AW『WIDESHORTSLIMLONG』に付された文章は、2009SSから続く滑稽にもみえるこの試みがもつ意味を明快に伝えている。そしてこのとき、新しい洋服をつくるための新しい祖形としてつくり出されたのがWIDESHORT(身長約100㎝)とSLIMLONG(身長276㎝)であった。
人のかたちにあわせるという洋服づくりの問い直しは、奇をてらった無邪気な試みではない。WIDESHORTの肩は人の肘にあたるようにつくられており、実際に人が着ることは強く意識されている。
思考実験を日常に引きずり込む。二種類のマネキンのそばで人が試着する風景は奇妙ではある。ANREALAGE流の「すこしふしぎ」が垣間見える。

第3章:テクノロジー
新しい技術の普及は人々の生活を劇的に変える。しかし、普及しきって日常化してしまうと、人はそれを技術とは認識しなくなる。ANREALAGEはあえて、この日常化した技術を洋服づくりに利用する。洋服が技術に新しい役割をあたえ、技術が洋服のある風景をすこしずつ変えていく。

フォトクロミック 2013-2014AW『COLOR』、2015SS『SHADOW』

フォトクロミック(2013-2014AW『COLOR』、2015SS『SHADOW』)
2011-2012AW『LOW』以降、ANREALAGEは洋服づくりにテクノロジーを使うようになる。3DCADやレーザーカット、シームレス縫製などはほかのブランドでも採用されているが、ANREALAGEはこれまで服づくりに使われていなかった技術を掘り起こし、洋服づくりに転用してきた。
そのひとつが、紫外線で色が変化するフォトクロミズム現象を採用した2013-2014AW『COLOR』や2015SS『SHADOW』である。日光にふれると一瞬で色が変わり、遮れば白へと戻る。これまでにない新しい服ではあるが、この技術は発見から50年以上もたっている。
「FAXくらいに日常化して忘れられた技術をつかいたい」と森永は述べる。技術の新規性よりも使い方の新規性をANREALAGEは重視する。服が着られる日常に新しさを加えることに価値を見出しているからだ。

『REFLECT』

スマホで何かを撮る。誰もがしていることであり、撮られるものには洋服も多く含まれる。画面を通して洋服を見ることももはや珍しいことではない。
このスマホと日常的な洋服との関わりを逆手にとったのが、再帰性反射という現象が使われた2016SS『REFLECT』である。フラッシュをたいて洋服を撮影すると、肉眼では見えない色や柄が映る。乱反射とは異なり、再帰性反射では光をあてている光源の方向にのみ反射するため、フラッシュとレンズが近接するスマホではないと反射をうまくとらえることができない。
2017SS『SILENCE』では、現実の空間には実在しない情報を現実の空間に重ねて画面上に映し出すAR(拡張現実)技術を採用された。アプリを利用し洋服の一部にかざすことで肉眼では見えない柄や文字が音とともに現れる。
誰もが知る技術を、誰もがしていることと組み合わせる。この絶妙な塩梅が「すこしふしぎ」をつくり出している。

洋服を新しくする
技術の転用によって変わるのは、洋服の色や柄や見え方だけではない。洋服のつくり方も変わっていく。

グレーのワンピースと白いカーディガン

これらは一見するとニットであるが、実はニットではない。ワンピースではニットの凹凸が型押しによって再現され、カーディガンはレーザーカットによってニットのようにつくられたものだ。ワンピースが発表された2012SS『SHELL』では、商品の包装などに使われるブリスターパックの技術が洋服づくりに転用された。

洋服のかたちをつくるのは、カッティングやパターン、編み方だけと決まっているわけではない。ニットが編むことでつくられる必要もない。
新しい洋服を作るのではなく、洋服を新しく作る。ANREALAGEは技術を利用することで、洋服をつくり方の新しくしていく。

彫刻に少し触れて
手がつくるかたちと技術がつくるかたち。
縫われる洋服と削られる洋服。
ANREALAGEが自らの軌跡を彫りあげる。

提供: 全展示アイテム
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