愛知県常滑市、平安時代末期から続くやきものと伝統が生きる町

伊勢湾から運ばれたやきもの
常滑焼は平安時代末期(約900年前)に始まりました。知多半島の丘陵地に多数の窖窯が築かれ、黒煙が立ち昇りました。窯数は総数2000基とも3000基ともいわれ、中世の窯業地としては最大の規模を誇り、焼かれた大きな甕や壺は船で全国へと運ばれていったのです。
《自然釉三筋壺》 平安時代末期
肩から胴部にかけて横方向に3段の並行する沈線が巡らされていることから、三筋壺(さんきんこ)と名付けられました。平安時代末期に盛んに焼かれた壺で、密教寺院や経塚で見つかっていることから、宗教との深い関連性が指摘されています。この三筋壺は鎌倉時代になると急速に姿を消していきます。
《自然釉大甕》 鎌倉時代
鎌倉時代以降につくられた中世常滑窯の甕は、口縁部を折り返した縁帯と呼ばれる粘土の帯を巡らせるのが特徴です。この縁帯によって、焼成時に起こる口縁部の亀裂を減らすことができ、重厚感のある造形へとつながりました。この時代の甕は直線的なシルエットとなり、肩が大きく屈曲するのも特徴です。焼き締められた深い褐色の地肌と黄緑色の自然釉の美しさは中世の日本が生み出した美、まさに中世常滑窯を代表する優品です。
《不識水指》 江戸時代
常滑の茶陶の中で、もっとも重要な位置にあるのが、《不識水指》です。侘び茶を完成させた千利休(1522~1591)の時代の茶の湯をうかがい知ることのできる『利休百会記』に「ばけもの」の名称で登場します。千利休が所持した常滑の水指は後に三千家の祖である千宗旦(1578~1658)が禅宗の開祖達磨の姿に見立て「不識」と名付けられたといわれています。戦国時代に生まれた名も無き陶工がつくったやきものが天下の大茶人に見出されることになるとは夢にも思わなかったことでしょう。
登窯(陶栄窯) 明治20年
この登窯は「陶栄窯」と言い、明治20年(1887)に建てられました。全長は22m、最大幅は9.6m、8室の「連房式登窯」です。窯の本体だけではなく、作業場も含めて保存されている貴重なものです。常滑の登窯は明治45年(1912)には約60基ありましたが、完全な形で残っているのはこの登窯ただ一つで、現在は国の重要有形民俗文化財に指定されています。
常滑のまちなみ
900年というやきもの長い歴史の中で、甕から土管、土管から建築陶器と時代の移り変わりとともに主となるやきものも変わっていきました。常滑は明治時代から昭和にかけて、「土管の町」と呼ばれていました。町を歩くとあちこちで、土管や焼酎瓶が土留めとして使用されている風景を見ることができ、当時の盛況ぶりを今に伝えています。
伝統を受け継ぐ常滑焼の拠点 とこなめ陶の森 陶芸研究所
陶芸研究所は、伊奈製陶株式会社(現LIXIL)の創業者、伊奈長三郎氏(1890~1980)が常滑陶芸の興隆を念願して寄附をいただき、その資金によって昭和36年(1961)に開設されました。設計はモダニズム建築の大家で茶室研究でも知られる堀口捨己(1895~1984)です。開設当初から若手陶芸作家の育成に努め、これまでに多くの研修生が巣立ち、中には世界中で活躍する陶芸家もいます。
常滑の朱泥急須
常滑で急須造りが始まるのは江戸時代後期の文化文政の頃と伝えられています。幕末期に初代杉江寿門(1827~1897)によって、朱泥焼の急須が完成しました。常滑の急須には朱泥のイメージがありますが、戦後になって定着したものです。人間国宝の三代山田常山(1924~2005)は先代の伝統を忠実に継承し、その中で今日的感覚を盛り込むことで独自の作風を生み出し、常滑の急須の全国での評価を飛躍的に高めました。
受け継がれる伝統と技術
北條陶房の清水源二(1945~)は「造り手から使い手に心の通う物造り」をモットーに轆轤による伝統的な急須造りを続ける急須職人です。伝統工芸士、常滑市指定無形文化財保持者に認定されています。
清水は急須を造る傍ら、後進の育成にもその心血を注いでいます。常滑の急須の持ち味は「持った時の軽さ」、「注ぎ口の水切れの良さ」、「長く使うことで育つ土味」と熱く語ります。
立命館大学アート・リサーチセンター 協力:京都女子大学
提供: ストーリー

資料提供:とこなめ陶の森 資料館

監修&テキスト:小栗康寛(とこなめ陶の森 資料館)

協力:北條陶房、佐藤一信 (愛知県陶磁美術館

編集:山本真紗子(日本学術振興会特別研究員)、京都女子大学生活デザイン研究所 清水彩野 (京都女子大学家政学部生活造形学科)

英語サイト翻訳: Meghen Jones

英語サイト監修: Melissa M. Rinne (京都国立博物館

プロジェクト・ディレクター: 前﨑信也 (京都女子大学 准教授

提供: 全展示アイテム
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