江戸時代に作られた贈答のための蒔絵盃

立花家伝来の盃コレクション
盃とは日本酒を飲むために使用される器です。江戸時代、漆塗や蒔絵を施した豪華な盃は、大名家階級が使用するために作られました。

この盃は、朱漆塗地に竹と亀を高蒔絵で表し、左上方に立花家の御定紋である祇園守紋を平蒔絵で配している。裏面高台内には「行年六十三歳/観松斎(花押)」と蒔絵の銘があり、これは徳島藩お抱え蒔絵師、飯塚桃葉の号である。桃葉を召抱えた藩主蜂須賀重喜の夫人は立花家五代藩主貞俶の娘、つて姫であった。この盃は吉祥の意匠が表されており立花家の家紋も配されていることから、立花家のお祝い事に際し、蜂須賀家からの贈答品であった可能性がある。

この盃には、渦巻状に描かれた江戸名所図双六が朱漆塗地に平蒔絵で表されている。盃に描かれた地名を実際の江戸の地図上に置いてみると、日本橋を起点に渦巻状になり、「御大手」で上がりとなる。大変に珍しい作例である。作者の高龍斎の経歴は不明であるが、江戸時代後期の印籠蒔絵師と見られる。

織部形の盃を朱漆塗りとして波鯉の高蒔絵とする。糸底に「枩山(花押)/吉国」銘がある。こうした織部形中盃程度の大きさで、大字長銘のものは当初から一盃として作られたと思われる。作銘から見て拝領品と思われる。

織部形を朱漆塗りとして平蒔絵と高蒔絵で表わしている。糸底に「隅田川/枩山(花押)/吉国」の蒔絵銘がある。描かれているのは、江戸の隅田川の橋場から寺島への渡しで、「須田の渡し」で、「梅若の渡し」、「真崎の渡し」とも呼ばれる。左に真崎稲荷明神社を、右に須田堤を、遠景に筑波山を描く。同形絵替の名所絵揃い盃と思われ、拝領品と思われる。

織部形を朱漆塗りとして平蒔絵で表わし、一部に金貝の極付がある。糸底には「平川斎(花押)」の蒔絵銘がある。画題は駿河町の三井越後屋で道を挟んで両側に総二階の豪壮な店舗は内部まで描かれ、遠景に江戸城と富士を望み、上空には黒漆で烏も描かれている。右が越後屋呉服店で「呉服物品々/駿河町/越後屋」、左は木綿店で「絹紬木綿類品々/駿河町/越後屋」の文字まで看板に書かれている。通常では小さ過ぎて描けない人物の目鼻まで描き込まれる。

平皿形の一盃で、朱漆塗に研出蒔絵・平蒔絵・高蒔絵で波に沖の石、和歌を表す。岩に切金を置き、飛沫を銀蒔絵、波頭を白密陀で描き、稚貝・螺鈿を象嵌している。立花家の重宝、「沖ノ石盃」の元歌、二條院讃岐による「わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそしらねかわくまもなし」に基づいているが、「わが袖は」のところが「わが恋は」となる異本百人一首の方で表している。表には「わが恋はひほひにみえぬ」の文字と、絵によって「沖の石」を表し、岩上にはさらに芦手で「乃」の字を配す。

裏には、「人こそしらねかわくまもなし」の文字と波・岩の意匠を表から連続させている。こうした和歌の一部を絵で表した盃は京都のものに多く、また厚手の木地も京漆器の特徴を示す。重宝「沖の石盃」の元歌を翻訳し、大盃を小型化して愛用する目的で、立花家から京都に注文したものと思われる。

この盃は作者が不明であるが、趣味性の高い作であり、藩主が江戸で特注したものと考えられる。鼈甲に梅を平蒔絵で、鷹を高蒔絵であらわしている。

いわゆる浮瀬(うかむせ)盃である。大坂新清水に元禄期(1688~1704)からあった有名な料亭「浮瀬亭」にちなんだ盃である。この店には松尾芭蕉、与謝蕪村、太田南畝、滝沢馬琴、シーボルトなど名だたる有名人が訪れている。店は様々な珍奇な盃を所有した。特に、七合五勺の「浮瀬盃」を所望すると主人浮瀬屋四郎右衛門が袴を着けて登場し、恭しく桐箱から「身を捨ててこそ浮かむ瀬もあれ」の和歌を蒔絵した内箱を取り出す。さらに内箱から鮑貝の巨大な「浮瀬盃」を取り出し、酒を奨める。これを飲み干した者は、店の帳面に名を記したと言われる。
通常の大きさの鮑の貝殻を利用した「浮瀬盃」は、いくつか現存する。多くは貝の穴を錆漆で塞いで岩を高蒔絵し、波や「浮瀬」の文字を平蒔絵してある。京都「角屋」にも、「浮瀬亭」ゆかりとされる「うき巣」盃や五点の鮑貝の盃が伝存している。立花家伝来品がどのような経緯で作られ伝来したか不明であるが、後には江戸にも「浮瀬」という同名の料亭ができたといわれ、あまりに有名であったために、写しが数多く作られていたとも考えられる。

By: 立花家史料館
提供: ストーリー

公益財団法人立花財団
立花家史料館

参考文献
高尾 曜 「蒔絵盃」『柳川の美術Ⅱ 第三章柳河藩主家時代の美術』 柳川市 平成19年

展示制作
植野かおり(立花家史料館)

提供: 全展示アイテム
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