色彩のファッション ―黒―

京都服飾文化研究財団

すべての色彩を飲み込み、黒は私たちを魅了し続ける。

過激さを秘めた色
暗闇、死、喪服、悪。黒は負のイメージと深く結びついています。すべての色彩を飲み込む黒の力強さに、私たちは恐れ、また魅了されてきました。

男性服の影響

18世紀末から19世紀初頭の新古典主義時代、その後の男性服の主流となる暗色のスーツの基礎が生まれます。貴族のたしなみだった乗馬をする女性は男性服の影響を受けた服を着ました。女性服への男性服の影響の始まりです。

テイラード仕立ての要素がうかがえるジャケットと、1860年代の流行である後方に大きくひろがったクリノリン・スカートの組み合わせ。マニッシュなジャケットや黒など当初は女性用乗馬服に採り入れられた男性服の影響は、19世紀後期、日常着にもひろがり、テイラード・スーツへと発展していく。

ジャケットの装飾には黒い宝石、ジェットが使われている。亜鉛、又は石炭の変種であるジェットは、西洋では古来より様々な工芸品の装飾に使用されてきたが、19世紀後期、喪服に関わる黒の流行と共に女性の装飾品として注目された。

メン・イン・ブラック

装飾を排除した上質な生地の輝きが、体に沿った綿密な仕立てを引き立てている。地味ではあるが細部にこだわった簡潔で機能的な紳士服は、19世紀初頭に浮上したしゃれ者「ダンディ」の美意識が手本となった。この新しい価値観により、男性服はその後ますます簡略化、定型化し、現代にまで続く規範として定着した。

テーラード・スーツ

質の高いテーラード・スーツで名高いクリード店による女性用乗馬服。テーラード・ジャケットとジョドパーズという機能的な男性服と、1930年代まで正式な女性乗馬服の決まりであった横乗り用の長いスカートという女性的な要素が混在しています。

黒のレース

アール・ヌーヴォー様式のデザインと呼応するS字曲線を描く、ベル・エポック期の典型的なスタイル。当時流行の機械編みレースを主体に多彩な装飾が施されていながら、黒を用いることで、流れるようなS字曲線が明快に表現されています。

日本の黒

ベルト背面には大きなボウをあしらって着物の帯のような効果を出し、黒、赤、金色の色使いも日本の漆細工を思わせます。1920年代、異国趣味の淵源はロシア、エジプト、南米、中国、日本へと広がりました。オートクチュールの老舗ランヴァンは、日本的な色彩やモチーフを積極的に採用しています。

リトル・ブラック・ドレス

第一次世界大戦後、社会的に自立した新しい時代の女性は、自らの活動的な生活様式に適合する機能的な服を求めました。機能性の追求がファッションとなったこのとき、それまで質実な制服や喪服などの色でもあった黒も、モダンな色として脚光を浴びます。

『ヴォーグ(米)』誌1926年10月号はシャネルの簡潔な膝丈の黒いドレスを掲載。大量生産を本格化させたフォード社の黒の単一モデルの自動車を例に挙げています。シャネルの簡潔な膝丈の黒いドレス「リトル・ブラック・ドレス」が新時代の女性のユニフォームとなることを予想したのでした。

モダニズムの色

シャネル作品を代表する1920年代の膝丈カーディガン・アンサンブル。シンプルな形態、モノトーンの色彩は禁欲的なまでに装飾を排除しています。着やすく、動きを妨げない伸縮するジャージー素材、短いスカート丈、簡素化された機能美は、社会で活躍する女性に愛され21世紀の今日まで、女性服の基本型となっています。

素材には当時注目を集めていた人造繊維レーヨンが用いられています。早くからスポーツウエアを手掛けたパトゥーの作品。第一次大戦後に出現した「ギャルソンヌ」と呼ばれる新しい女性たちは、服装による性差をなくそうとします。男性の象徴だったパンツをはくようになりますが、室内用、海岸などでのリゾート着に限定されました。

一見シンプルな黒のイヴニング・ドレスは、ヴィオネの緻密な計算によるバイアス仕立て。バイアス・カットによって服は女性の身体にしなやかに沿い、黒はその描線を最も効果的に、ドラマチックにみせます。

質素を求められ、制約の多かった第二次世界大戦時下、軍服を思わせるテイラード・スーツが流行した。そこには華やぎを与えるために大きなターバンや派手に飾り付けた帽子がコーディネートされたのである。

異国の色

黒いシャンティイ・レースをダイナミックに使い、流れるようなリズム感が表現されています。卓抜した裁断技術によって新しい造形を探求した「オートクチュールの巨匠」バレンシアガの作品には、現代的な造型性の中に出身地スペイン的要素が垣間見えます。

ジェンダーレスの色

女性のためのスモキング(タキシード)・ジャケット。ドレスが主流のイヴニングにアンドロジナス的要素を持ち込んで高く評価されたスモキング・ジャケットは、晩年まで繰り返し発表され、イヴ・サンローラン作品を象徴するものでした。

ミニマリズムの色

チュニジア生まれのアズディン・アライアは、1980年代初頭、急激に進化したストレッチ素材を多用し、独自の裁断を駆使して、色も装飾も削ぎ落とした第二の皮膚のような服でボディ・コンシャスなファッションをリードしました。身体美を際立たせつつも活動性を妨げない彼の服は、21世紀の今なお、高く評価されています。

美意識の色

豊かな色彩がファッションに溢れていた1980年代初頭、川久保玲は黒を中心とした無彩色の、非構築的な服をパリで発表。そこでは、黒一色のなかにも明暗が表現されていました。西洋の色彩表現の範疇に収まらない新しい表情を持つ黒は注目され、80年代、時代の色となります。

山本耀司は、1980年代初め、川久保と共に無彩色、ぶかぶか、アシンメトリー、意識的な穴や破れを施した、西洋の既存の美意識を覆す作品によってパリで賛否両論を巻き起こしました。美の停滞を嫌い、それを意識しようとしない怠慢を否定しつつ、現代の日常生活に依拠した服作りを行う山本の独自の姿勢は、その後も一貫しています。

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
Google で翻訳
ホーム
トピック
現在地周辺
プロフィール