語源
天鵞絨(てんがじゅう)と書いてビロードと読みます。なぜこんなに分かり難い漢字表記になっているかというと、諸説ありますが、ビロードという織物が日本に伝来した際に、ポルトガル語のveludoの音と、中国語の天鵞絨(白鳥の織物という意味になるそうです)の文字が同じ織物を指したことから、このような当字のような形になったといわれています。
歴史
天鵞絨が日本に伝わったのは、今からおよそ500年前、安土桃山時代のことでした。鉄砲などと同様、ポルトガル船によってもたらされたと伝わります。南蛮船によってもたらされる珍しい羅紗や天鵞絨などの織物は、当時、戦国大名にとって最先端のファッションであり、大変人気がありました。戦国大名の織田信長や上杉謙信旧蔵と伝えられるマントも残っています。
天鵞絨はヨーロッパにおいても16世紀から17世紀に流行し、ヴェネツィアはその産地としても知られていました。ただ、近年の研究成果により、16世紀にはすでに中国でも制作されていたということが明らかにされてきており、桃山時代に日本に伝来した天鵞絨は中国産である可能性も高くなっています。
日本における製作
輪奈と呼ばれる組織を切ってつくられる天鵞絨は、日本人にとって長らく、どのようにして作るのか分からない、大変珍しく貴重な舶来の織物でした。日本において製作され始めたのは、江戸時代末のこと。輪奈組織の中に、取り除くことを忘れられた竹ひご(針金説もある)を見つけたことにより、その製法が解明され、製作が可能になったと伝わります。明治から大正にかけて、服飾に加え、国内外での高級室内装飾への需要が拡大し盛んに製作されるようになります。
天鵞絨友禅
幕末の混乱を経て明治の世になると、貿易がさらに盛んになっていきました。そのような時代背景の中、明治11年(1878)に京都の十二代西村總左衛門(現千總)が開発したのが、天鵞絨友禅という美術織物でした。ただの友禅染ではなく、天鵞絨に友禅を施し、一部を起毛することで立体感や風合いの違いを出すことに成功した作品は、一見絵画のようにも見えますが、やはりそれとは違う独特の味わいを持っています。
日本的花鳥図や動物図、風景図などを表わした天鵞絨友禅の作品は西洋で人気を博し、明治33年(1900)のパリ万国博覧会では、仏女優のサラ・ベルナールが髙島屋飯田新七の出品した天鵞絨友禅の作品を気に入り購入したとの記録も残っています。(残念ながら現在は所在不明。)
天鵞絨の制作方法
天鵞絨の特徴は、金属線を織り込むことにより輪奈と呼ばれる織りの組織を作り、その頂点を切って起毛させることによって、ふっくらとした厚みのある織物に仕上げることにあります。金属線を手作業で織り込み、またそれを手作業で切って取り除くことで完成する有線天鵞絨は大変な手間がかかる作業を必要とします。 この輪奈を切る作業に使う道具も、特注品。モノレールのように金属線を挟んで滑らせると、中央に着いている刃で輪奈の頂点が切れる仕組みになっています。
当初竹ひごをつかって輪奈組織を作っていた天鵞絨は、明治時代になりより扱い易く丈夫な銅線を使うようになりました。銅線は扱い易いが柔らかかったため、木の鞘を使って経糸の間を通し、織り込んでいたといいます。現在では張りがあり、より扱い易い鉄とステンレスの合金線を使うようになっています。
一度織り込まれた金属線は、切って取り出した際には、曲がったり表面にちょっとした傷がついてしまったりしています。それを石の台の上でたたいて伸ばし、でんぷんで磨くことによって表面が滑らかな状態に戻し、再利用します。どこにでもある材料で再利用を可能にする、昔からの受け継がれた知恵なのです。
天鵞絨は、現在に至るまで高級織物として和装コートやショール、鼻緒やバックなどの和装小物として人気はあるのですが、有線天鵞絨という手法はあまりにも手間隙がかかるため、次第に姿を消していきました。京都の園部町の天鵞絨工業株式会社の工場のみが、現在でも唯一こうした有線天鵞絨の手法を伝えています。

伝統的な技法を守るだけでなく、くるみボタンの小物など現代に合うような製品改良にも熱心に取り組んでいます。

伝統的な技法を守るだけでなく、くるみボタンの小物など現代に合うような製品改良にも熱心に取り組んでいます。

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京都女子大学 生活デザイン研究所
提供: ストーリー

【資料提供・協力】
日本天鵞絨工業株式会社
清水三年坂美術館

【監修・テキスト】
・松原史(清水三年坂美術館 特別研究員)

【撮影】
・上杉遥

【英語サイト翻訳】
・黒崎 美曜・ベーテ

【サイト編集・制作】
・岩田光生(京都女子大学生活造形学科

【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也 (京都女子大学)
・山本真紗子(立命館大学)

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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