仏教彫刻から発展。存在感ある彫り文様の漆器

仏師からの転身
鎌倉時代に幕府が置かれ、また禅宗の都として栄えた、現在の神奈川県鎌倉市で受け継がれてきた木彫漆器が鎌倉彫です。須弥壇や前机など、寺院調度の彫刻や、中国渡来の漆を塗り重ねその表面に彫刻を施す堆朱(ついしゅ)が、鎌倉彫の源流と考えられています。そうした彫刻は仏師の仕事で、室町、桃山、江戸と受け継がれますが、江戸時代の末には衰退していたようです。しかし明治時代、廃仏毀釈令の影響を受けて職を失った仏師の後藤、三橋の二家が鎌倉彫に移行したことで、鎌倉彫は息を吹き返します。内外の博覧会に出品、高い評価を受けたことも大きな自信となりました。また、風光明媚な鎌倉の地に、当時の皇族をはじめ各界の著名人が別荘を構え、家の調度として鎌倉彫を愛好したことも追い風となり、鎌倉彫は発展していきました。
新時代の鎌倉彫を目指して
内国博覧会や海外の万国博覧会で高い評価を得た明治期の鎌倉彫は、美術工芸としての道が開けるとともに、新しい形や意匠を模索していきます。

古典を踏まえながらも、躍動感ある構図や、デフォルメ、省略などで、現代性を加味し、彫刻や塗りにも工夫を加えます。彫刻としての美しさと、調度品としての使いやすさを考慮し、現代の鎌倉彫を完成させます。

鎌倉彫の作品 明治時代
鎌倉彫再興の基礎を築いたひとりである後藤齋宮(いつき/1838~1908)の作品は、全体のフォルムも手彫りしたもので、鳳凰や雲を浅くなだらかに彫り、大らかさの中に雅味をたたえています。
鎌倉彫の作品 大正時代
父・齋宮とともに鎌倉彫の再興に尽力した後藤運久(1868~1947)の作品。図案のページに登場している龍は、まさにこの硯箱のもの。文様のまわりの角を削って、まろやかに仕上げる後藤彫りと、仏像の古色仕上げにヒントを得た乾口塗りを完成させた齋宮と運久は、その後の鎌倉彫に大きな影響を及ぼしました。
鎌倉彫の作品 昭和時代
後藤運久より技術を学んだ孫の後藤俊太郎(1923〜2006)は、鎌倉彫の技法に西洋彫刻の表現方法を取り入れながら、新しい感覚の作品を精力的に制作。また、鎌倉彫の歴史と技法をまとめた『鎌倉彫』(主婦と生活社)の執筆などを通して、鎌倉彫の発展に寄与しました。鎌倉彫は、昭和52(1977)年には、通商産業省(現・経済産業省)の伝統的工芸品指定産地の認定を受けています。
鎌倉彫の作品 現代
現・博古堂当主の後藤圭子の作品。深く彫った唐草のうねりを一つの作品としてまとめあげた、モダンな作風。仏師からの流れを受け継ぎながら、デザイン的なアプローチで、鎌倉彫の新時代を牽引。堅牢で美しい、木彫文様の漆器の可能性を模索しています。
新たな挑戦
軽く、熱を伝えにくく、酸にも油にも強い漆器を、もっと日常に取り入れてもらえたなら、と、デザインや価格を見直し、博古堂当代の後藤圭子デザイン、博古堂工房制作で、これからの鎌倉彫を提案。ブランド名は Hakko。彫刻を加えたものだけにとらわれず、日常使いできる漆器として、鎌倉彫の産地から発信を始めています。
鎌倉彫 乾口塗りの工程
明治のころ後藤斎宮、運久により創案され、今日の鎌倉彫の主流をなす漆塗り技法です。研ぎ出したところが赤く、彫り込まれたところが黒く残る、古びを帯びた味わいが特徴です。彫刻から始まり漆塗装で仕上げるまで、大きく分けて9段階のプロセスがあります。木地は北海道産のカツラが多く使われます。木目が緻密で柔らかく、彫刻しやすい性質が、鎌倉彫に向いているのです。6カ月から1年かけて乾燥させ、狂いが出ないようにしてから加工に入ります。箱類は指物師に、丸い容器は挽物師に、と木地師に依頼したものを用いて、そこに彫刻を施し、漆塗装へと進みます。
作業工程 彫刻
鎌倉彫の大きな特徴は、彫刻による装飾性です。仏師の技術を受け継ぐ気韻ある仕上がりは、何種類もの彫刻刀を駆使して彫り分けることで生まれます。すみずみまで行き渡った彫りの仕事により、美術工芸としての美しさを実現しています。
彫刻刀
小刀、平刀、丸刀、三角刀、曲がり、ナマゾリ、両刃、平鑿(のみ)、丸鑿など、さまざまな彫刻刀を駆使して彫り進めます。彫る仕事は、刀をこまめに研いで、いつでも切れ味よくしておく必要があり、刀を研ぐ技術を身につけた上で、初めて彫刻することができるようになります。
作業工程 塗り
鎌倉彫の場合、彫り込んだところにも漆をしっかり塗る一方、漆がたまらないよう均質に塗っていかなければならず、高い技術が求められる塗師の仕事です。写真の作業は、黒漆の中塗りの上に、透き漆に本朱を加えた朱漆で上塗りをしているところです。
博古堂
京都女子大学 生活デザイン研究所
提供: ストーリー

【資料提供・協力》
・後藤圭子
博古堂

【監修・テキスト】
田中敦子

【撮影】
渞 忠之

【英語サイト翻訳】
・エディー・チャン

【サイト編集・作成】
・中谷渚(京都女子大学 生活造形学科
・植山笑子(京都女子大学 生活造形学科

【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也 (京都女子大学 准教授
・山本真紗子(立命館大学)

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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