新たな視点で宇宙をさぐる―ニュートリノ

日本科学未来館

宇宙に満ちあふれる謎を解き明かすべく、研究が続いています。

かに星雲(超新星爆発), コレクション所蔵: 日本科学未来館
謎多き素粒子、ニュートリノ
宇宙を形づくる最も小さな要素、「素粒子」。なかでも長い間正体をつかめなかった素粒子が「ニュートリノ」です。正確な重さなどの基本的な性質もまだわからない一方、天体の爆発や宇宙の誕生の謎を解き明かす鍵になると期待されています。
見えない放射線をとらえる霧箱, コレクション所蔵: 日本科学未来館

宇宙がどのような物質でできているのかを探る研究は、古くから続いてきました。宇宙から飛来する放射線をとらえる「霧箱」の発明もその1つです。霧箱では、宇宙線が作り出す小さな粒子を捉えることができます。
このような研究の積み上げの結果、最も小さな要素である「素粒子」が発見されました。何種類もある素粒子のうち、見つかる前から存在を予言されていたのが「ニュートリノ」でした。

宇宙から来るニュートリノ, コレクション所蔵: 日本科学未来館

星の爆発、太陽の中心部、宇宙誕生の瞬間など、さまざまな場所で生まれるニュートリノ。実は、毎秒数百兆個もあなたの体を通過しています。

宇宙から来るニュートリノ, コレクション所蔵: 日本科学未来館

しかし、他の物質とほとんど反応しないため、気づくことはおろか、捉えることも難しく「幽霊粒子」と呼ばれていました。

宇宙のはじまりとその歴史, コレクション所蔵: 日本科学未来館

幽霊粒子のニュートリノを捉えることができれば、宇宙で起こるいろいろな現象や、素粒子の謎を解き明かせるかもしれません。
なぜ宇宙が誕生したのか、なぜ私たちが存在できるのか――ニュートリノはその謎に迫る鍵をにぎっているのです。

日本科学未来館 常設展示「ニュートリノの観測」, コレクション所蔵: 日本科学未来館
幽霊粒子を“視る”
見えないニュートリノを“視る”ために作られた装置がスーパーカミオカンデ。検出が困難なニュートリノを捉えるために、ノイズが少ない地下1000メートルでの巨大タンクの建造や微弱な光を捉える光センサーの開発など、様々な新技術が結集しています。
スーパーカミオカンデの全体見取り図, 1996, コレクション所蔵: 日本科学未来館

ニュートリノは、ごくまれにしかほかの物質と反応しません。そこで、ニュートリノを捕らえるためには、大量の物質を用意する必要があります。
スーパーカミオカンデでは、直径39.3m、高さ41.4mのタンクに満たされた5万トンもの超純水がその物質として使われています。

タンクの内側に並ぶ光電子増倍管(展示), コレクション所蔵: 日本科学未来館

水分子とニュートリノが反応すると、微弱な光「チェレンコフ光」が生まれます。スーパーカミオカンデは、その光を感じるセンサー、光電子増倍管を壁に敷き詰めることで、幽霊粒子を捉えています。

光電子増倍管, 浜松ホトニクス株式会社, 1981, コレクション所蔵: 日本科学未来館

飛び込んできた光の粒(光子)を電気信号に変換する光電子増倍管。高い精度で正確に計測するために、直径約50cmという世界最大、高感度なこの光センサーが開発されました。

スーパーカミオカンデの内部写真(実物), 1996, コレクション所蔵: 日本科学未来館

タンク内の光電子増倍管の数は、なんと1万1129個。70cm間隔で並ぶ姿は圧巻です。この一つひとつで、チェレンコフ光を捉えています。

スーパーカミオカンデで観測されたデータ, 1996, コレクション所蔵: 日本科学未来館

水の分子とニュートリノが反応した地点から円錐型に飛び出るチェレンコフ光は、壁に届くと円形の跡として観測されます。届いた光の強さや時間から、どの方向からどんな粒が飛んできたかを調べられるのです。

日本科学未来館 常設展示「ニュートリノの観測」, コレクション所蔵: 日本科学未来館

チェレンコフ光をどのように捉えるのかをイメージするために、展示をのぞいてみましょう!

日本科学未来館 常設展示「ニュートリノの観測」, コレクション所蔵: 日本科学未来館

スーパーカミオカンデを1/10の大きさで表現したこの展示では、チェレンコフ光が壁に届く様子がわかります。
さて、この観測装置から、物理学の常識を揺るがすような大発見が2回もありました。その研究には、それぞれノーベル賞が贈られています。

2002年ノーベル賞物理学賞 受賞者 小柴昌俊博士, コレクション所蔵: 日本科学未来館

小柴博士

スーパーカミオカンデの生みの親である小柴昌俊博士は、前身のカミオカンデを用いて宇宙ニュートリノを捉えることに成功し、ノーベル物理学賞を受賞しました。
17万年前に大マゼラン雲内で、ある星が寿命を迎えて超新星爆発をおこしました。それにより発生した大量のニュートリノが、1987年2月に地球に到達し、そのうち11個をカミオカンデが捉えました。さらに太陽の中心部で核融合反応の際に生成されるニュートリノを捉えることに成功。ニュートリノ天文学という新しい分野を拓きました。
                                                                                                           

2015年ノーベル賞物理学賞 受賞者 梶田隆章博士, コレクション所蔵: 日本科学未来館

梶田博士

梶田隆章博士 は、スーパーカミオカンデを利用して宇宙線と大気の衝突から生まれた「大気ニュートリノ」について研究し、ノーベル物理学賞を受賞しました。
梶田博士が参加した研究チームが、大気ニュートリノが振動していることを世界ではじめて証明しました。
ニュートリノが振動するということは、その性質が周期的に変化するということ。つまり、ニュートリノに質量があることを意味しています。それは、これまでの物理学の知識では説明できない現象でした。                                                                                                            

宇宙の果て, コレクション所蔵: 日本科学未来館

スーパーカミオカンデによって、さまざまなことが解き明かされてきました。研究がさらに進めば、ゆくゆくは宇宙のはじまりや、生命の起源なども解き明かされていくかもしれません。

日本科学未来館 5階カフェ 「Miraikan Cafe」, コレクション所蔵: 日本科学未来館

しかし、まだわかっていないことは多く残っています。宇宙の謎を明らかにしていくことで、この世界の成り立ちや、私たち自身についての理解が徐々に深まり、新たな発見や技術の開発へとつながります。
「宇宙をさぐる」ことは、未来の私たちを豊かにするための“贈り物”でもあるのです。                                                                                                                                                                                                        

提供: ストーリー

日本科学未来館

東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

NASA

NASA/JPL-Caltech/University of Wisconsin

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