HANAE MORI HAUTE COUTURE

森英恵 仕事とスタイル

黄金色の鶴のドレスとカフタン(2004) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

オートクチュール

森は、ファッションにかかわるようになった当初より、クリスチャン•ディオールやピエール•カルダンの仕事などに触発され、手仕事による繊細、精緻な服作りを至上のものと位置づけて創作活動を展開してきた。1960年代半ばよりアメリカへと活動領域をひろげ、洋服という西洋でうまれた衣服をベースに、日本の伝統的なモティーフを巧みにとりいれた表現は「東と西の出会い」と高く評価された。1977年には東洋人女性として初めてパリモードの最高峰、オートクチュール組合に加盟を果たす。ここでは、森がアメリカでデビューした1960年代半ばから2004年の最後のオートクチュール・コレクションまで40年間の仕事を代表する作品を紹介する。帯地や反物など質の高い日本の素材を用いて花鳥などの図案を配したドラマティックなイブニングドレス、レースや刺繍によって飾られた華麗なカクテルドレス、また立体的で洗練されたフォルムのシックなスーツなど、幅広いスタイルを見ることができる。いずれも確かな手仕事により仕上げられた、究極の服である。

帯のドレスとコート(1964) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

森英恵は、日本国内で映画衣裳のデザインを皮切りにキャリアを積み上げ、1964年にまずはアメリカで作品を発表した。本作は同年、ラスベガスで開催された「国際ファッション・フェスティバル」に参加した際に発表したもの。モデルの入江美樹が本作を着用した写真が残っている。

菊のパジャマ(1966) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

1965年、森はニューヨークのホテル・デルモニコで初の海外コレクションを発表した。このショーでダラスの高級百貨店ニーマン・マーカスのオーナー、スタンレー・マーカス氏に見いだされ、ニューヨークの百貨店を中心に、アメリカ国内で森のドレスが販売されるようになる。

当時アメリカでは、自宅に客を招いた際に女主人が着用する華やかなホステスガウンの需要があった。それに応えるものとして、本作のような華やかで気品ある森のドレスは人気を博した。本作はまた、リチャード・アヴェドンにより撮影され、『アメリカン・ヴォーグ』(1966年11月号)に見開きで掲載された。森の代表作の一つ。

帯地風に仕立てた生地を使ったイブニングコートとドレス(1968) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

コートには、ブランド名をひらがなで「はなえもり」と手書き風の字体で表し、「Made in Japan」と併記したラベルが付いている。アメリカに進出しビジネスが順調に拡大していた時期の作例で、生地から仕立てまで一貫して日本製にこだわった1点。アメリカの舞踊家、マーサ・グラハム氏が愛用していたドレスでもある。

蝶のカフタン(1976) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

蝶の図案を活かしたデザインはアメリカで活躍していた時代に考案されたもので、HANAE MORIブランドを象徴するモチーフになった。
1986年、ポンピドゥーセンターで開催された「前衛芸術の日本 1910−1970」展では、本作をふくむ4点の衣装が出品された。

蒔絵を思わせる赤い絹のイブニングドレス(1994) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

秋草を金でプリントし、蒔絵風に仕上げることで日本の伝統的な芸術作品を強くイメージできるよう工夫された作品。

蝶とタイガーと波を染めた白い絹のドレス(2004) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

蝶、虎、そして波という東洋的なモチーフをあしらったドレス。森は国外に活動の場を拡げて以降、「日本」や「東洋」の要素と洋服の融合を一貫して試みており、本作もそうした作例に連なるものである。装飾的でドラマティックな要素も盛り込まれ見る者に強い印象を与える。

蝶とタイガーと波を染めた白い絹のドレス(部分)(2004) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

黄金色の鶴のドレスとカフタン(2004) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

黄金色の鶴のドレスとカフタン(部分)(2004) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

シルクサテンとウール地で網代編みをあしらったカクテルスーツ(1989) - 作者: 森英恵島根県立石見美術館

『森英恵流行通信』(17, 18, 22, 24, 29号)島根県立石見美術館

言葉の仕事

 森は衣裳制作の傍ら、雑誌や新聞にたくさんの記事を書き、連載も持った。その表現はいつも端的で的確であり、一般の読者が親近感を持てる明快さがある。森の言葉の仕事は著書『あしたのデザイン』、『ガラスの蝶』、『ファッション-超は国境をこえる』、『グッドバイ バタフライ』など衣裳制作や自身の活動を自ら語るものをはじめ、1950〜60年代には洋裁雑誌に衣裳デザインとともに仕立てのポイントを著したり、着こなしを指南するページを持った。中でも『装苑』において連載された「モードの焦点」(全24回)は「巻きつけるたのしさ」「切る」「赤」など、素材や色についてデザイナーならではの視点で語られ興味深い内容となっている。また、1966年からは『森英恵流行通信』を発行。本誌は当初森英恵の店において顧客に配布された新聞形式の読み物で、ハナヱ・モリブランドの広告や情報に加え「日本繊維新聞」と提携し、いち早く写真付きで世界のファッションニュースを掲載した。本誌は1969年には『流行通信』と誌名を改め、世界のコレクションや、デザイナー、ファッションの動向に深く切り込む特集記事が特徴の、本格的なファッション誌へと発展してゆく。

Mori’s writings include books about clothing creation and her own fashion work, such as Ashita no detain, Garasu no Cho, Fasshon Cho ha kokkyo wo koeru, and Goodbye Butterfly. In the 1950s and ‘60s she also offered pointers for sewing along with clothing designs in dressmaking magazines and published columns advising readers about how to wear clothing for best effect. Among them, her series “Mode Focus” (24 articles) published in Soen magazine provided fascinating reading from a designer’s perspective on “the fun of wrapping,” “cutting,” “red,” and other aspects of working with materials and colors. From 1966, she also began publishing Mori Hanae Ryuko Tsushin. This was a newsletter publication distributed to customers in Hanae Mori boutiques at the time. In collaboration with Japan Sen-I Shimbun newspaper, the newsletter aimed to report the latest world fashion news illustrated with photographs, as well as providing information on and advertising the Hanae Mori brand. In 1969, the publication changed its name to Ryuko Tsushin and developed into a full-fledged fashion magazine with special features regarding international fashion collections, designers, and trends.

『あしたのデザイン』(1979)島根県立石見美術館

Books

『あしたのデザイン』(文庫), 1982, コレクション所蔵: 島根県立石見美術館
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『ガラスの蝶』, 1984, コレクション所蔵: 島根県立石見美術館
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『ファッションー蝶は国境をこえるー』, 1993, コレクション所蔵: 島根県立石見美術館
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『グッドバイ バタフライ』, 2010, コレクション所蔵: 島根県立石見美術館
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提供: ストーリー

協力:森英恵事務所

写真撮影:
伊奈英次(蝶とタイガーと波を染めた白い絹のドレス、黄金色の鶴のドレスとカフタン、シルクサテンとウール地で網代編みをあしらったカクテルスーツ、蝶を配した桜色の婚礼衣裳、紫地に蝶が染め抜かれた留袖)
井上治夫(帯のドレスとコート、菊のパジャマ、帯地風に仕立てた生地を使ったイブニングコートとドレス)
杉本和樹(蒔絵を思わせる赤い絹のイブニングドレス、『森英恵流行通信』)

提供: 全展示アイテム
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