美術になった竹

日本文化と竹
日本の気候は竹の生育に適しており、古代から竹は日本人の生活と密接に繋がっていました。縄文時代の遺構からは竹で編んだ籠を漆で固めた籃胎漆器が発掘されていますし、正倉院には精巧に編まれた華籠が現存しています。日用の道具をつくる材料として、竹はさまざまな用途で使い続けられてきたのです。
煎茶の流行と竹
日本での竹工芸の技術が高まったのは江戸時代中期のことです。大阪や京都を中心にして中国の漢詩・漢文・水墨画への憧れを背景にもつ文人文化や煎茶の流行がおこります。
文人とのつながり
常に青くしなやかで強風でも倒れない竹。主義主張を曲げないという、中国で人の上に立つ人物に必要な「節操」の象徴であるとされました。更に、加工しやすい竹は、教養人の使う道具の材料として重宝されたのでした。
唐物籠
江戸時代の終わりから昭和時代の初期にかけて煎茶が日本全国に広まります。その流行の中心にあった大阪では、煎茶を嗜む場で使う花籠や盛籠として竹籠への需要が高まりました。中国からもたらされたいわゆる「唐物籠」が最も珍重されましたが、それだけでは数がとても足りません。そこで、江戸時代の後半から大阪で中国の竹籠に倣った日本製の竹籠が作られるようになったのです。
三人の竹工芸家
明治時代の大阪には3人の有名な竹工芸家がいました。住吉の初代和田和一斎(1851~1901)、難波の呑光斎、船場の初代早川尚古斎(1815~1897)は、中国製の唐物籠を忠実に写すことから、日本風にアレンジを加えることまでさまざまな試みを行いました。
当時、全国には4万人を超える竹工芸の職人がいましたが、彼ら大阪の竹工芸家は高い技術力でその頂点のひとつとされたのです。
世界一の技術
竹工芸は日本だけにとどまらず海外でも知られる存在となりました。1876年~77年に日本に滞在したデザイナー、クリストファー・ドレッサー(1834~1904)は、「日本人は世界一の籠作家であり、彼らは自分達だけの力で工業を美術産業に引き上げた。彼らの造る籠は使いやすいだけではなく美しいものであり、真の美術作品として評価されるべきものである」(Christopher Dresser, Japan: its architecture, art, and art manufactures, 1982, p. 454)と述べています。そして、ハンブルグ工芸美術館には初代早川尚古斎の作品が数十点も所蔵されているのです。
初代田辺竹雲斎
その後、特に初代和田和一斎の弟子たちが関西の竹工芸の世界で活躍するようになります。中でも明治後期から大阪の竹工芸を代表する人物となったのが初代田辺竹雲斎(1877~1937)です。華道、水墨画、煎茶等で多彩な才能を発揮したことでも知られています。精巧な唐物の写しから、自由な荒編みの籠に至るまで、さまざまな作品を制作し、多くの弟子を育てました。大正3年には、初代竹雲斎作の花籠が天覧に供され、天皇家に献納されたといいます。
竹・籐・漆
戦後も大阪の竹工芸家は茶の湯や煎茶、華道の場で使う花籠を中心に作品をつくり続けてきました。竹工芸の材料として主に使われるのは、竹、籐、漆です。日本にはおよそ300種類の竹が自生しているとされていますが、一般的に使われるのはその中でも10種類程度。
竹を割る
日本全国から集められた良質の竹を手に入れ、それを竹ひごにすることから作業は始まります。籐は所々で竹を縛るために使われます。そして、編み上がった作品は多くの場合、漆で表面を覆って仕上げられるのです。作品の形は変わっても、基本的な制作の方法は、過去も現在も変わることはありません。
海外で注目されるバンブー・アート
1980年代以降、アメリカを中心に海外でも注目されている日本の竹工芸。緻密に編まれた伝統的な唐物籠だけではなく、曲線を駆使してくみ上げられた作品は現代の建築を思わせます。伝統と歴史と現代がひとつになったもの。それが、大阪の竹工芸なのです。
立命館大学アート・リサーチセンター 協力:京都女子大学
提供: ストーリー

資料提供&協力:田辺小竹、若林晃、NAEJ Collection

写真:渞忠之、藤原次郎、斎藤正光

映像: A-PROJECTS 高山謙吾

監修&テキスト:前崎信也 (京都女子大学家政学部生活造形学科准教授)

編集:山本真紗子(日本学術振興会特別研究員)、京都女子大学生活デザイン研究所 坂下理穂(京都女子大学大学院家政学研究科生活造形学専攻)

英語サイト翻訳: Eddy Y. L. Chang

英語サイト監修: Melissa M. Rinne (京都国立博物館

プロジェクト・ディレクター: 前﨑信也 (京都女子大学 准教授

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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