上杉鷹山が奨励した室町時代から続く紙漉きの伝統

川の彩
深山地区のある白鷹町は山形県中部に位置し、町の中央を南北に最上川が流れます。町内の道の駅白鷹ヤナ公園では最上川にヤナを設置し、四季を通じて見せる最上川の変化とアユを楽しむことができます。
深山地区
やや緩やかな東の山並みとは対照的に、西側には1000メートルを超える葉山などの朝日連峰が山岳風景となって迫ります。深山和紙を漉いている深山地区の景観はその山裾に拡がるのどかな風景となっています。
時の流れとともに
深山和紙の歴史は古く、室町時代に遡ります。深山地区の周辺でも紙漉きが行われ、17世紀の古文書には江戸に送る「上り紙(のぼりかみ)」として上質であったと記されています。それ以降にも、この地を支配していた米沢藩主上杉鷹山により楮の栽培が奨励され、紙漉きは栄えました。かつては、障子紙だけでなく、藩の御用紙や特産品を舟運で運ぶ際の包み紙としても大量に使用されていたのです。
和紙を守る
最盛期には地内100戸のうち半数が和紙づくりに携わり、村全体が農家の冬の家内工業として紙漉きを受け継いでいました。しかし、昭和40年代にはほとんどの家で紙漉きを行わなくなっていきました。かつては各家庭で漉かれていた深山和紙は、現在では深山和紙振興研究センターで守り伝えています。
深山和紙振興研究センター
現在、紙漉きを行っている高橋恵氏は平成15年から深山和紙振興研究センターを受け継いでいます。振興研究センターでは深山和紙の製作工程が解説されていて、工房内も見学することができます。また、事前に連絡すれば紙漉き体験をすることもできます。地区の祭り「白鷹鮎祭り」に合わせた工芸体験まつりでも紙漉きや絵付け、マーブリングの体験などを行いました。
昭和40年代
深山和紙振興研究センター内には昭和40年代の写真で製作工程が解説されています。そこには、一家総出で作業に取り組んでいたかつての姿を垣間見ることができます。深山和紙は江戸時代から続く製作工程が変わらないことが評価され、山形県指定無形文化財に指定され、今もその製法が守り伝えられています。
変わらぬ素材
深山和紙の特徴は「ニレ」にノリウツギを使うことにもあります。「ニレ」は「ネリ」ともいい、水中に粘りを与え繊維を分散、滞留させる効果があり流し漉きに欠かせません。トロロアオイが使われることが多いですが、山形では多くの地域でノリウツギが使われました。ノリウツギは栽培が難しく、山中に自生しているものを採取して、木の皮を剥いだ内側を削いで煮ることで粘液を作ることができます。そのため「ニレ」にノリウツギを使う和紙は多くありません。紙漉きの技術だけでなく、そこに使う素材や道具も大切なものとなっています。
紅花の彩
現在の深山和紙は伝統的な寸法により漉かれた障子紙だけではありません。山形の特産として知られる紅花は実は白鷹町が日本一の生産量を誇ります。この紅花をつかった染め紙も新たな深山和紙の色彩となっています。
卒業証書として
白鷹町の小中学校をはじめ、山形県内の大学の卒業証書にも使われています。
小物類
名刺、封筒、便箋、色紙、ペンケース、といった様々なものが和紙により作られています。その他にも、地元の白鷹人形研究会により、和紙を用いた深山和紙人形「しらたか人形」が作られて、振興研究センターに展示されています。
新しいあかり
山形で開発された有機ELパネルと深山和紙が融合した「YUKI ANDON]という新しい灯りも、米沢有機EL照明実用化研究会により開発されました。
製作工程: 楮刈り
11月末、楮の葉がすべて落ちてから刈り取ります。太さによって選別し、同じくらいのものを束ねます。
製作工程: 楮きざみ/楮ふかし
楮を長さ80cm程に切りそろえ、束ねます(「楮きざみ」)。釜の上に「へくび」と呼ばれる藁の土台を置き、その上に楮の束を乗せ、樽を被せて覆います(「楮ふかし」)。 2~3時間程、蒸気で蒸かします。かつては家々で行っていた作業も、今は地域の人々が手伝いながら行います。
製作工程: 楮はぎ
蒸かした楮に水を掛け、冷めないうちに皮を剥ぎます。
製作工程: 黒皮干し/楮ひき/楮さらし
はぎ取った皮は黒皮といい、束にして家の軒場の「はせ」に掛けて干します(「黒皮干し」)。乾燥した黒皮を水に浸して柔らかくした後、甘皮を「楮ひき包丁」で削いで取り除き「白皮」にします(「楮ひき」)。白皮を「はせ」に掛けたり、雪の上に並べて7日から10日間ほど、漂白します(「楮さらし」)。さらした白皮は乾燥した後、貯蔵します。
製作工程: 楮洗い/楮ねり
楮に付着している塵やほこりを洗い落とします(「楮洗い」)。ソーダ灰の入った水を煮立てて楮を入れて1~2時間半煮ることで楮を柔らかくします(「楮ねり」)。煮る時に浮いてくる楮は「紙ねり棒」でつついて沈めます。
製作工程: 生洗い/叩解
ソーダ灰やチリを洗い流します。(「生洗い」)。打解機とビーターを使って繊維を柔らかく解きほぐします(「叩解」)。
製作工程: 紙漉き
紙を漉く「漉き舟」に水をはり、適量の楮と「ニレ」をまぜてかき回します。紙を漉くには、簀ですくいあげて前後と左右に揺り動かし、余分な水は捨てる。これを繰り返して漉きます。漉き上げた紙は押板の上に重ねます(「紙漉き」)。
製作工程: 押しかけ/紙つけ
押板の上に重ねられた紙の水分を切るためにうえから圧力を加える(「押しかけ」)。 紙つけ棒に絡ませ、紙板(桂の木)にはりつけ、天日で乾燥させます(「紙つけ」)。
楮の彩
かつては乾いた紙の周囲は裁断して出荷していました。しかし、今は手漉きであることの証として残すことが多くなっています。少しずつ手法の違う紙からは楮の繊維の表情の違いを楽しむことができます。
深山和紙振興研究センター
深山和紙の製作の他にも、紙漉きについての展示を行っています。紙の製作の見学をできるだけではなく、予約をすれば紙漉き体験もできます。
立命館大学アート・リサーチセンター 協力:京都女子大学
提供: ストーリー

資料提供: 深山和紙振興研究センター

監修&テキスト: 大山龍顕 (東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター

編集: 京都女子大学生活デザイン研究所 坂下理穂(京都女子大学家政学研究科)、小林祐佳 (京都女子大学家政学部生活造形学科)

英語サイト監修: Melissa M. Rinne (京都国立博物館

プロジェクト・ディレクター: 前﨑信也 (京都女子大学 准教授

提供: 全展示アイテム
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