色彩のファッション ―赤、黄、青―

京都服飾文化研究財団

原初の色―赤―
堅牢で鮮やかな色彩が得られる染料は、時に金に比肩するほどの価値で取引されていました。東洋や新大陸の文化は、そこから輸入される染料とともに西洋の色彩感覚に影響を与えました。

かつてケルメスやコチニールなどの高価な天然染料によって得られた赤。赤は古くから人々の憧れをかき立ててきました。本品では赤と白のペキン縞が強いコントラストを見せています。ペキン縞は、もとは中国で作られた同等の幅による縞柄の織物。中国趣味の広がりを受けて、1760年頃にはフランスでも作られるようになり流行しました。

私邸の室内で着用されたゆったりとした室内着。異国情緒溢れる色と柄の表地は、西洋の市場向けに中国で製作されたテキスタイルを使用している。

本品の紫がかった赤は、動物染料ケルメスで染められています。ケルメスは地中海沿岸に古くから生息するケルメス樫に寄生するカイガラムシ。一枚の布を染めるためには大量の雌が必要とされ、中・近世に南仏などの地中海地域に巨額の富をもたらしました。

本品は赤という色彩、前部分のブランデンブルグなどに、軍服の影響がみえます。赤の染料はコチニール。大航海時代以降、スペインによって中南米からヨーロッパに大量にもたらされ、世界中に普及しました。

18世紀末に西洋にもたらされたカシミア・ショールは、インド北西部カシミール地方の山羊の短く柔らかい毛を手で紡いだ高価な品。赤を中心とする多彩な色彩と異国的で精緻な柄、柔らかい肌触りにたちまち女性たちは魅了されます。希少性と異国趣味、実用性も兼ねて、19世紀を通じて大きな流行となりました。

デザインや質感にアール・デコの特徴がよく示されている作品。ジャン・デュナンは日本の漆職人から技法を学び、西洋のデザインに応用した工芸作家。漆を金属や布に用いるなど斬新なアイデアでアール・デコを代表する作家として後世に名を残しました。

両義の色―黄色―
中世ヨーロッパでは黄色は卑しい色として蔑まれていましたが、18世紀には、ファッショナブルな色になります。ここには、当時もてはやされた中国趣味(シノワズリー)の影響などが見られます。色彩の流行や色の貴賎の印象は、交易の問題とも深く結びついています。

本品の黄色染料は西洋で古くから用いられているキバナモクセイソウ。幾何学と草花模様の立体的なキルティング・ステッチの凹凸の陰影は、豊かな黄色の色調をもたらしています。

黄色は中世まで、キリスト教文化において異端の色、蔑みの色でした。一方、中国では黄色は皇帝の色。異国への憧憬を駆り立てた18世紀、中国趣味の流行とともに黄色は一転してファッショナブルな色として使われるようになります。

コート、ウエストコート、ブリーチズで構成される18世紀の男性服は、美しい色彩の豪華な絹地で作られていました。本品は黄土色をベースに輪郭装飾カルトゥーシュで小花を取り囲んだ繊細なモチーフの織物による三つ揃い。

イギリスのスピタルフィールズ製テキスタイルのドレス。黄色の地に織りだされた中国風と、古代ギリシアのモチーフは、どちらも当時流行のもの。

18世紀後半、宮廷服を除いて衣服は簡素化へ向かい、女性服にもカジュアルな着装が広がりました。ドレスに使用される布にも軽やかな風合いのものが主流となり、縞柄への嗜好もそうした傾向を表しています。とりわけフランス革命直前の80年代には、男女共に縦の縞柄の服が広く流行しました。

革命期以降もナポレオンのエジプト遠征などによって、エジプトやトルコ風の異国情緒に富んだ縞柄が流行し、衣服や室内装飾などで頻繁に見られました。

普遍の色―青―
世代や地域を越えて好まれる青。歴史的にもさまざまな青がファッションの表舞台に登場します。聖母マリアや王家の服、ワークウェアから街着になったジーンズ、……。青が普遍的な魅力をもつのは、この色が自然界にあまり存在しない色、空や海のごとく手の届かない深遠な色だからかもしれません。

大柄の植物柄が純銀製の銀糸によって眩いきらめきを放つテキスタイルは、スピタルフィールズ製の絹織物。青い絹タフタと銀糸のコントラストが見事に調和しています。軽快優美、自由奔放といったロココ趣味のテイストを色彩がより際立たせています。

淡いパステル調の色彩と軽やかな刺繍が特徴的なスーツ。17世紀の重厚な色味に代わり、18世紀は柔らかく淡い色調が多くなります。フランスの宮廷画家ブーシェや貴族の肖像画で有名なイギリスのゲインズバラらが描く女性たちの服にも、こうした色彩を見ることができます。

本品の大柄のボーダー柄は木版プリントによるもの。大柄は小柄に比べて版ずれがおこらないように技術を要し、さらに絹とウールは捺染が難しい素材。この色鮮やかなプリントは捺染技術の飛躍的な発展を示す好例です。

鮮やかな紫は、合成染料によるもの。イギリスの化学者ウィリアム・パーキンが1856年に発明したアニリン染料をきっかけに、合成染料の鮮やかな色彩は人々の心をとらました。流行の要素を素早く引き上げて顧客たちを満足させたウォルトらしい作品です。

合成染料に特有の鮮やかさを持った青色のドレス。19世紀後半、青色はリヨン・ブルーやアルカリ・ブルー、合成インディゴなど多種の合成染料が生み出されました。

細いウエスト、広がったスカート、ホルター・ネックは1950年代ファッションの代表的なスタイル。紫味を帯びた青色が一際目を引きます。エレガントな中のカジュアルなテイスト、それがデザイナー、ロベール・ピゲの持ち味でした。

60年代に発展したヒッピー文化は、男女とも長髪、手工芸的なフォークロア・ファッション、ぼろぼろのジーンズといった反近代的なスタイルを生みました。ジーンズはアメリカの労働者たちが着ていたもの。ジーンズは腰下全体にパッチワークが施され、手仕事の要素が強調されています。

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