柳宗悦に見いだされた草木染の手織り木綿布

丹波布
江戸時代から明治末期まで、兵庫県丹波市、佐治で農家の女性たちの手仕事として織られていたのが「丹波布」です。栽培した木綿を手で紡いで糸とし、身近な草木で染めて織られる丹波布は、紡績した糸を化学染料で染めて作られる、近代以降の一般的な織物とは異なります。その静かで穏やかな風合いをもつ布は民藝運動の主唱者、柳宗悦に注目されることとなり、途絶えていたものが復興され、現在に至っています。縞と格子が織り成す美のすがたは、今なお多くの人をひきつけてやみません。
糸紡ぎ
糸を織り手が自ら紡ぐのは、今や日本全国でもほとんど行われなくなった丹波布の特徴です。収穫した棉実から種を外す「綿繰り」、絡みあった繊維をほぐす「綿打ち」のあと、綿を棒状に巻きあげた「じんき」を左手に持ち、そこから糸を紡ぎ出しながら糸車の心棒に絡め、カラカラと糸車を回して紡錘形に巻き取っていきます。粗糸を引き出しながら撚りをかけて紡いだ糸は、機械で紡ぐのとは異なり、均一な太さにはなりませんが、かえってそのことが、織り上がったあとの風合いを生み出します。
染色
紡ぎあげ、綛(かせ)にした糸は、藍だけは専門の紺屋に出して染められますが、その他の色はすべて、丹波のゆたかな自然が育んだ天然の材料によって染められます。榛の木ややまももの樹皮、イネ科の雑草、コブナグサ、オニグルミやヤシャブシ、丹波の特産品でもあるクリの鬼皮など、様々な植物を染めの原材料として用いて染め、石灰、みょうばん、鉄などで媒染して、丹波布独特の落ち着いた、慕わしい色彩が生み出されています。
整経
染め上げた糸は糊付けし、経台(へだい)にかけていきます。今までに織り上げられた布の小片を張り込んだ「縞帳」や、見本となる布を参考にしながら、織り手の好みと工夫で糸を順番に色ごとにかけ、縞を立てていきます。38㎝の着尺幅には600本の糸が必要です。これが機(はた)では経糸(たていと)となり、丹波布独特の縞模様を構成します。
整経は、自身が紡ぎ、染めた糸を配置して、織る模様を作っていくための重要な行程です。完成品のイメージを思い描きながら、経糸を整えていきます。丹波布の縞はこの作業から生まれます。
織り
経台から糸を移して、機ごしらえをした後、いよいよ織りの作業が始まります。経糸の間に、糸を収めた杼(ひ)を何度も往復させ、織り上げていきます。一回で糸一本分の幅しか進まない、大変な作業ですが、丹波布はすべて、機械織りではなく、手織りによって作られています。
このとき、緯糸(よこいと)に通常の木綿糸だけでなく、「つまみいと」を織り込むのが丹波布の特徴です。つまみ糸とは、かつて丹波でも盛んだった養蚕で、繭から糸を作る時に出る屑繭を煮て直接手でつまみ出し、膝の上で撚りをかけるため、糸にはわずかな肥痩がありますが、これが絹糸の光沢をともなって、布の表面に横縞となって現れることによって、丹波布の美しさが際立ちます。
特徴
木綿を主として織られ、丈夫なため、丹波布の着物は一着あれば一生着ることができると言われています。また吸水性、通気性も良く、家庭で洗うこともでき、大変機能性に優れています。 仕立てたばかりの丹波布の着物は、木綿ならではのハリのある風合いに富み、凛とした着姿に見せてくれます。そして、着れば着るほどに体に馴染んで、柔らかな印象に変化していきます。丹波布とは、まるでデニムのように経年の変化を楽しめる織物でもあるのです。
丹波布伝承館
丹波・佐治の農家の手仕事として織られていた丹波布は、京都や大阪にも盛んに出荷されていましたが、時代の流れによって、明治時代末期以降にはその営みは廃れてしまっていました。しかし、当時の品を大正・昭和初期に見出した柳宗悦が京都の朝市で発見し、その美に注目したこと、染色研究家の上村六郎が柳に触発されて佐治を調査に訪れたことから、復興・保存の機運が高まりました。
丹波布伝承館
地元では昭和中期から平成25年まで丹波布復興の第一人者である足立康子が積極的に活動し、丹波布技術伝習教室によって多くの人に技術を伝え続け、丹波布はよみがえりました。1998年には丹波布伝承館が開館し、その歴史や特徴を展示によって紹介しています。また、伝承館には、丹波布の製作技術を2年間で学ぶ伝習生制度があり、地元だけではなく、全国から希望者を受け入れ、その技術を次の時代へと伝えています。
京都女子大学 生活デザイン研究所
提供: ストーリー

【協力】
丹波布伝承館

【テキスト・監修】
村田隆志

【写真】
・津嶋修平

【英語サイト翻訳】
・黒崎 美曜・ベーテ

【翻訳監修】
・メリッサ・リンネ (京都国立博物館)

【サイト編集・制作】
・笠井貴江 (京都女子大学 現代社会学科
・澤井優莉(京都女子大学 教育学部音楽教育学専攻

【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也 (京都女子大学 准教授
・山本真紗子(立命館大学)

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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