吹き出しを付けたい歌麿

美人画の名手として知られる喜多川歌麿。彼の美人画が優れている理由はいくつもある。流麗な線描と魅力的なポージング、大首絵による微妙な表情の描き分け、おひさ・おきたなど実在の人物をキャラクター化する手腕。そしてここで特に強調したいのは、人々の生活のリアリティだ。母親と若い娘、幼児、赤子らの様子は歌麿が身近に観察した情景を目の前に見るようだ。人物同士の関係性や気持ちがありありと伝わってくる。こういう作品を見ていると、登場人物のセリフをつぶやいている自分に気付くことがある。そこで、吹き出しを付けて思い切り登場人物に会話させたくなるような作品をピックアップしてみた。

1.《衝立の男女》 ボストン美術館
若い女「ん〜なんかいい匂いがする」 若い男「お嬢さん鼻の穴が広がってますよ」

2.《刺身の支度》 ボストン美術館
娘「すりすり、すりすり、すりすり」 母「あんた口じゃなくて手元に集中しな」

3.《絵本四季花》 国立アジア美術館(ワシントンD.C.)
父「おお雷鳴ってきた、雨戸雨戸」 三女「かーちゃん怖い」 母「早く蚊帳に入り」 次女「ぎゃー、やめてー、雷はやめてー」 長女「おまえの叫び声がうるさいよ」

4.《覗き》 メトロポリタン美術館姉
「母さんは今お化粧中だからじゃましないの」 赤子「ばーぶー」 母「ベロベロ〜」

5.《台所》 ボストン美術館
女1「ちょっとお湯汲ませてね」 女2「あ、まだぬるいかも。ちょっと火を強くするね」 女1「ふしゃーっ」
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