明治・大正期の博多の風俗を描いたもの。作者の祝部至善(ほうりしぜん)は明治15(1882)年、博多中島町生まれの日本画家である。若い頃から、野中一徳斎に浮世絵を学び、日本画家の松岡映丘、洋画家の矢田一嘯にも師事した。昭和49(1974)年没、享年91歳。
この風俗図49点は、晩年に描かれたものである。現在では失われてしまった民俗行事や農村や漁村から盛んに町にやってきた行商人や宗教者、また近代の博多の情景があますところなく描かれており、人々の交流で賑わっていた博多の様子を彷彿とさせる。それぞれの画中には行商人の振り声などが記されており、瞬時に失われていく町の日常をあますところなく記録したものとしても貴重である。
「八朔」とは、旧暦8月1日の節供である。その年に男児が生まれた家が、笹竹に玩具を付けた飾り(さげもの)を玄関に飾り、近所の子供たちに自由に取らせる行事である。男児の成長を願う行事だが、博多では既に失われ、現在見ることはできない。
【ID Number1989P03432】参考文献:『福岡市博物館名品図録』