赤、青、黄色の派手な色使いや、描かれた人物の素朴でキッチュな表現が強烈な輝きを放つ作品。向かって右隻は、成人の男女が見守るなか、獅子舞や凧あげなど正月の風俗を思わせる唐子遊びを中心にした中国風景が描かれる。対して左隻は、オランダの風俗を洋風表現を交えて描き出す。館の内部ではグラスを持つ女性を男性が抱き寄せているが、食卓に出されたヤギの頭まるごとの料理が見るものの度肝を抜く。屋外では音楽にあわせて子供たちが腕を広げて踊り、大人たちも気ままにたたずんでいる。両隻とも、男女のぺアと子供たちが主人公のようで、何かの祝祭を意味しているのかもしれない。
右端に描かれた虎図の衝立(ついたて)にこの屏風の作者である谷鵬紫溟(こくほうしめい)の落款がある。谷鵬紫溟の詳しい伝記は不明で、文化年間に版画を制作し、肖像画を得意とした長崎の洋風画家だったらしい。ところで、この屏風は
大縁(おおべり)、小縁(こべり)から各扇(せん)のつなぎ目まで全てが画家によって筆で描かれたいわゆる描き表装(かきひょうそう)で、そんな点にも江戸や秋田の洋風画とは異なった、谷鵬紫溟の強烈な個性が発揮されている。
【ID Number1989B00908】参考文献:『福岡市博物館名品図録』