現代日本を代表する美術家。1956年千葉県生まれる。1984年東京藝術大学大学院修了。1980年代から発表を開始し、最初は樹木のかたちをモチーフにしたY字型の形象を描いた作品で注目を集める。その後、「斜行グリッド」、「開かれたC型」、「連鎖-破房」、「破庵」、「採桑老」、「織桑鳥(フェニックス)」のシリーズを相次いで展開する。アメリカ抽象表現主義を批判的に乗り越えるべく、日本や中国の古典を参照しつつ、新しい次元の絵画の創造、独自の絵画理論を探求している。制作総点数が1200点を超えた現在も、これまでの抽象絵画とは異なるレヴェルにある絵画制作の実践に取り組む。
「採桑老」、「死を悼みて」の2つのシリーズにおいて「死」と対峙する絵画について考察した中村は、次に「再生」を暗示する主題に取り組む。その最初のシリーズが「織桑鳥」と書いて「フェニックス(=不死鳥)」と読ませるシリーズである。テロや戦争、自然災害が相次ぐ世界と向き合う中で、絵画を描くことの意味を模索し続け、ようやく到達したのが、飛翔を意味する「鳥」としての絵画であった。このテーマは2000年代半ばより「存在の鳥」というシリーズに移行し、総数300点を超えるこれまでで最大数の連作となる。