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犬を抱く少女

ホーファールト・フリンク1635/1639

公益財団法人 東京富士美術館

公益財団法人 東京富士美術館
東京都, 日本

金と宝石で装飾された豪華な白いドレスと淡い緑色のケープに身を包み、白い羽飾りと宝石のついた縁なしにベールをつけた少女が、腕に眠る小犬を抱いてこちらを向いている。
左上方から当てられた光によってモデルの顔が効果的に肉付けされており、さらに仄暗い空間のなかに繊細な衣装や宝石の材質感をも浮かび上がらせている。背景の左側には柱とアーチの一部が見え、室内の広がりを示唆している。
この愛らしい少女の半身像は当時人気を博したようで、本作の他に数点のヴァージョンが知られている(モルトケのカタログには5点の同構図の作品がフリンクあるいはその工房の作として掲載されている)。これら複数の作品のうちで最初に制作されたと考えられているハンブルク美術館の所蔵作品と比較すると、全体的に本作の方が質が高いと思われる。それは頭部の羽飾り、頭髪、布、宝石などの細部の質感表現が勝っているうえ、背後の空間の広がりにもより説得力があるからである。したがって本作は、1630年代の後半に描かれたとされるハンブルク美術館の作品より少し以前に、フリンク自身の筆により制作されたものと考えられ、本作を含めて6点現存する同構図の作品群の中では、原作に相当する作品といえよう。
フリンクは1633年、18歳の頃にレンブラントの工房に入り、弟子としてではなく助手として約1年働いた。署名や年記のある最初期の作品は1636年からのものが知られている。その絵画は本作に見るようにレンブラントの強い影響を示すが、次第に色彩は明るさを増し、描写も大まかで形式的な性格のものに変わっていく。この作品を見るかぎり、構図の取り方や褐色の色調、明暗の調子づけなどレンブラントの影響が著しいが、少女の顔の描き方や表情にはレンブラントにはない対象の美化と穏やかさが感じられ、色彩もより柔らかく優美な印象を与えるものとなっている。

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