ルオン・シュアン・ニーは、「緑色の巨匠」と呼ばれた画家。田園風景が人気を集めたベトナムでは、緑色を主とした絵画が多いのは当然だが、その中でも特に作者がこう呼ばれたのは、その色彩感覚が高く評価されたことを意味している。この作品でもふんだんに使われている緑色は、差し込む外光とその影を映すように微妙な変化を見せ、同時に白いアオザイを引き立て清新な画趣を作り出している。作者の関心は、対象を色彩の変化と柔らかな筆触で写実的に、かつロマンチックな印象で表現することにあったようである。しとやかなアオザイ女性はベトナムを象徴するイメージとして、作者が卒業したインドシナ美術学校の画家に人気があった題材である。1955-1981年に母校(ベトナム高等美術学校と改称)で教鞭をとり、教育者としても高く評価された。