四季折々に変化する嵐山の自然に心を寄せた渓仙が、本作で描いたのは雨に煙る嵐山です。時雨は晩秋から冬にかけて断続的に降る小雨のこと。渡月橋の東側から望む嵐山は朱や黄の葉で美しく彩られています。、雨に濡れて紅葉がひときわ鮮やかです。山あいには霧が白く立ち、ひんやりとした空気感まで伝わってくるかのようです。川岸には屋形船を停める船頭、水嵩の増した川にも竿をさす、たくましい筏士など、渓仙が日々目にしていた地元の人々の姿も描きこまれています。秋らしさを感じさせる高い空に目を移すと、黒雲が風に流れてゆく様子。晴れ間がのぞき、雨に洗われた木々の葉が日差しを受けて輝きだす光景もまた美しいことでしょう。