戦国時代(15世紀末~16世紀末)に、古河(現在の茨城県古河市)に拠点を構えて、北関東に統治する地域を持っていた室町幕府の出先機関の長であった足利政氏(あしかがまさうじ)が用いたと伝承されている甲冑(かっちゅう)。政氏(まさうじ)が晩年に創建し、隠棲(いんせい)した甘棠院(かんとういん)に伝来したもの。胴や草摺(くさずり)に室町幕府将軍家の足利家の家紋の桐の紋様の蒔絵(まきえ)が描かれ、金具にも足利家の丸の中に二本の横線を引いた「二引両(ふたつひきりょう)」と呼ばれる家紋が使われている。甲冑を構成する小札(こざね)という小さな鉄板を縦に結びつける威糸(おどしいと)は、武蔵国(現在の埼玉県・東京都・神奈川県の一部)の特産品の薄青色の縹糸(はなだいと)で、具足(ぐそく)の黒漆に映え、質素ななかにも堅牢な実戦用の具足の品格を醸し出している。埼玉県指定文化財。