彫刻のようなボディス。ボーンの入ったタイトな身頃から、針金入りの大きな衿が大胆にドラマチックに立ち上がっている。大きな肩と立体的な構成を特徴とした1980年代の様式に則った、ラクロワのオートクチュール作品である。
伝統回帰が鮮明になった80年代、ラクロワは87年、LVMHの傘下において、パリでオートクチュールのメゾンを設立。大学で美術史を専攻した彼は、18世紀のドレスや19世紀後期のバッスル・スタイルなど、奔放な造形性をもつ歴史的な衣装をポストモダン感覚の現代服として大胆にアレンジして沈滞していたオートクチュール界に新風を吹き込み、88年からはプレタポルテも手掛けて注目された。しかし2005年、LVMH社はラクロワ・ブランドを売却し、09年、ラクロワはオートクチュール、プレタポルテから撤退した。