右幅には水中を泳ぐ鯉、左幅では水しぶきを上げて空中に飛び上がる鯉を描いた作品。右幅の鯉はさらに深いところへ潜ろうとしているのでしょうか、左の胸びれを後ろに、右の胸びれを前に出しています。一方、左幅の鯉では両側の胸びれを翼のように前に出して、さらに上へ跳ねようとしているようです。口の横にある長い鬚は、長崎で活躍した長崎派と呼ばれる画家の描く鯉と共通しており、それらの作品から影響を受けていることがわかります。頭部は濃い墨で塗り、鰓より後ろの鱗は、当時若冲しか行っていなかった「筋目描き」の技法を使って1枚1枚表しています。