暗緑色を背景に、顔の見えない胴体にたくさんの穴が空いている。穴からは様々な物体がのぞくが、それらは髑ど くろ髏やカラスや武器など不吉なものばかりである。暴力や恐怖を暗示しながらも、画面は静謐で美しい。この作品はスレンドラン・ナヤルがここ数年制作し続けている『体系的神話』シリーズの1点である。作家の出身地であるインド南西部のケーララ州は政治活動がもっとも活発な地域であるというが、このシリーズに共通して潜む政治的なほのめかしもそこに端を発するのだろうか。それにより歴史や神話、伝統、セクシュアリティ、宗教、言語といった我々を取り巻くあらゆることに対しての懐疑の念が生じ始める。自由であるはずの身体さえ、すでに侵略を受け、自らのものではなくなっているのだ。