現代美術の最前線より、戦後の日本美術を牽引した画家。1928年京都生まれ。近代日本画の巨匠・堂本印象を伯父に持つ。1949年に京都市立美術専門学校卒業。1948年日展に初入選するも日本画壇に飽き足らず、1955年にパリに渡り、当時盛んだったアンフォルメルの活動に参加する。堂本は一つのスタイルに止まることなく、次々に画風を変化させていった。ヴェネツィア・ビエンナーレやサンパウロ・ビエンナーレをはじめとする国際的な展覧会において高い評価を獲得している。
「臨界」とは、核分裂の「連鎖反応」で中性子の生成と消失が均衡状態にあることをいう。「臨界」のシリーズは、「連鎖反応」シリーズで見せた画面を覆うS字型のパターンの上に、カンヴァスの矩形を反復するかのような同心正方形が重ねられている。規則的な正円の配置の水平構造の上に、同心正方形を描いた絵具の滴りの垂直性が加わり、これまで堂本の絵画を成立させていた二次元的な構造をより複雑なものにしている。この「臨界」のシリーズは、堂本の絵画制作の一つの到達点を示したという意味において、堂本を代表する連作シリーズと言うことができよう。