涙を流す女性。玉ねぎを切ることにかこつけて、彼女は何故泣いているのだろうか。重要なことは、作者自身の分身でもある彼女に涙を流させる社会環境が背後にあるということだろう。作者は、男性中心的な社会の制度や慣習の中で、女性が体験する苦悩をテーマに、女性たちの現実を再現する。なお、女性や鶏、卵、野菜など全てが陶製で本物に似せて作られている。陶芸は、工芸として美術から区別され、時に男性に対する女性の地位のような扱いをされてきたが、それを現代美術のなかに取り込むことで、いわば陶芸の地位の復権が果たされている点も注目される。