直線的でシンプルな生成りのドレスに、赤色の牡鹿や木々、連続した幾何学模様が映える。クロスステッチを使ったロシアの伝統的な刺繍。1911年のヨーロッパ巡業の際、ポワレがモスクワから持ち帰ったテキスタイルとされている。ロシア西部の歴史的都市の名を冠した本品は、妻、ドゥニーズのために作られた。また、同名の類例の存在が2点確認されている。
ポワレは素材や装飾の豪華さよりもテキスタイル・デザインの芸術性や独自性を重視していた。ライフスタイルが変化し、家庭の象徴であった女性たちが活動的に社会へと羽ばたいていく中で、彼女たちが求めたのは本品のような機能性や快適性に優れた服だった。