ダゴベルト・ペッヒェ(1887-1923)は、20世紀初めに活躍したオーストリアのデザイナー。ザルツブルク州ザンクト・ミヒャエルに生まれた。ウィーン工科大学、ウィーン美術アカデミーに学び、1912年頃からテキスタイルや陶磁器の仕事を始めた。1915年からウィーン工房に参加し、家具や銀器、陶磁器などの工芸品、壁紙やテキスタイルなどの平面装飾、グラフィック、衣装など多岐にわたる分野で、デザインを手がけた。後期ウィーン工房の中で、もっとも重要なデザイナーの一人であり、初期のウィーン工房にみられる単純なフォルムと規則的な構成のデザインとは違って、華やかで幻想的な装飾を得意とした。1923年、26歳の若さで夭折している。陶製の物入れは、ペッヒェがウィーン工房に正式に参加する前の作品、表面にモノトーンでペッヒェ独特の蝶や星といった幻想的な装飾が施されている。ウィーン工房の製作である象牙のペンダントには、ペッヒェがよくもちいたモチーフである「ハート型の葉」が使われている。