真っ黒な雲の中に真上を向く龍の頭が見え、大きな口、鼻、耳、角などが上下逆に描かれています。頭部の右下には玉を摑んだ3本の指が、下側にはわずかに胴体の鱗が確認できます。画面の上部にあたる、頭部の右側から画面下の部分は紙本来の色のまま残して、墨を塗っていません。さらに雲との境界線を擦れさせたり、滲みによって微妙に色を変化させ、雲の立体感と動きを増すよう工夫が凝らされた作品です。若冲の龍図の作例としては、正面を向いて大きく口を開けた龍や真横から描いた龍図が知られていますが、いずれも目の上に大きな眉毛のような毛が生えており、胴体の鱗には「筋目描き」が用いられています。