ポップ・アートの旗手、ロイ・リキテンスタイン(1923-97)の絵をテキスタイルに配した本品は、後身頃に《日の出》(1965)が大胆にプリントされたドレスと、図柄をまったく配さないアイボリー単色のコートのセット。1965年にパリのイレアナ・ソナベンド・ギャラリーで開催されたリキシュタインの展覧会のオープニング・パーティーで、彼の友人レッティー・ルー・アイゼンハワーが着用して話題をさらった。リキテンスタインが美術界の寵児として名を馳せていた時期に作られ、彼のトレードマークであるベンデイドットと署名が入った着るアート作品。それは、あたかもこのドレスが「絵画」であり、コートがお披露目前の絵画に掛けられた「白布」のような演出効果をもらたす、新作発表そのものであった。60年代、アートと生活はかつてなく互いに距離を縮めた。リキテンスタイン、ウォーホルといった気鋭のアーティストたちは当時の活き活きした空気を映し出すファッションを媒体に選び、自らの表現を街へ送り出した。