流麗なS字を描くシルエットは当時の典型。水紋と植物文様の有機的な線が薄い絹シフォンの上にアップリケと刺繍で立体的に表現されており、19世紀末から20世紀初めにかけて流行した装飾様式アール・ヌーヴォーの影響が明らかである。
スカートに配された植物は水辺に咲く杜若か菖蒲であろう。様式化されたこの文様は、画家ウジェーヌ・グラッセやE.A.セギーらによって監修された図案集に登場する植物を髣髴とさせる。これらの図案はテキスタイルをはじめ、木製家具や花器、照明器具などに応用され、アール・ヌーヴォー様式を特徴づけた。