住吉社頭における祭礼を描いた作品で、住吉踊りや猿田彦が描かれているところから、旧暦六月晦日に行われる夏越祭(住吉祭)の様子かと思われる。
むかって右隻に描かれた住吉踊りは、その起源が社殿造営の勧進のため神宮寺社僧が諸国を踊り巡ったことにあるといわれている。勧進僧は、五月の御田植祭から六月晦日の夏越祭までは、住吉や大坂周辺に留まっていた。
左隻では、行列の先頭に花飾りの母衣武者二人が歩き、その後を屋台が曳かれていく。屋台の中では赤熊(しゃぐま)の人物が舞っている。住吉祭礼図に屋台が描かれている例は他に見られないが、時代が下がると共に祭礼の風流としてこれが加わったものであろうか。
屋台から右が神事行列であり、神官に先導された猿田彦、獅子、神輿など通常みられる祭礼の様子が描かれるが、本作の特徴は踊りや風流を大きくとりあげているところにあり、現存する住吉祭礼図のなかでも類例のない構図となっている。