鶴と亀に挟まれた寿老人、というおめでたいもの尽くしの三福対の絵画です。
中央に座る寿老人は七福神の一柱で長寿を授ける神です。その姿は小柄で身の丈三尺(約九〇センチ)といわれ、長い頭に白くて長い髭をたくわえ、手にした杖には人間の寿命を記した巻物をぶら下げ、鹿を伴っている姿で描かれるのが一般的です。この作品の寿老人は、座ってその巻物を広げて眺めています。表情もどこかユーモラスで意味深です。この絵を描いた土佐光芳は、江戸時代中期に宮中絵所預、つまり朝廷絵師の代表として活躍した人物です。江戸時代中期の土佐派らしい明るく温かで雅な画風が、祝いの席を彩ったことでしょう。
中幅の上部には冷泉為久の歌がその息子為村によって写されています。歌の内容は展示パネルをよく読んで下さい。為村が父為久の書き直しの跡までそのまま書き写しているのは面白いです。どの部分か見つけてみて下さい。