印象派の代表的画家。1870年代は戸外の光をすばやいタッチで捉えた作品を制作。83年に終生の地ジヴェルニーへ移り、水面の光の反映や、大気中に浸透する光の微妙なニュアンスの表現を探求。《積みわら》にはじまる連作群を経て、記念碑的な大作《睡蓮》に至る。その後の20世紀美術の動向にも大きな影響を与えた。
同じ視点から朝の効果を描いた他の2点の作品の存在が知られています。2年後に描かれる25点の《積みわら》によって、モネは《睡蓮》へと連なる壮大な連作の世界に分け入っていきますが、この作品はその先駆けとなった記念碑的なものです。1870年代までの画風に比べ、筆触は柔らかく繊細になり、幾重にも重ねられて、画面のすみずみに及んでいます。どっしりとした積みわらを基点に、流動する大気と浸透する光、絶え間なく変容する世界が見事にとらえられています。厚みのある大気や光に包まれて、あらゆるものがゆっくりと動いているようです。モチーフの積みわらは、脱穀前の麦を積み上げたもので食料貯蔵庫の役割も果たし、農業国フランスの大地の豊穣を象徴するものでもありました。