お座敷などで弾かれる三味線は、胴に牛や猫などの皮を張ったものが一般的ですが、元々はこのように蛇の皮を使った「蛇皮線」という楽器でした。奏でているのは縮緬の無地の着物に、ベルベットの羽織をまとった女性。羽織はもともと男性の着物から派生したものであり、芸妓のように美を誇るのではなく、音や花など、技を誇る芸事の師匠などが好んで着用するものでした。通常の三味線よりも、高い音がより強く響く蛇皮線を選択し、自分だけの音色で聴かせようとする、彼女の自負をも描き出そうとした作品です。貞以は、洋花のカーネーションを生けた象嵌の花瓶を描き加え、嗜好にも個性を感じさせる画面としています。