中国の霊峰清涼山には、千尋の谷に架かる石橋(しゃっきょう)といわれる橋があり、その先には文殊菩薩が住む浄土があるという。この石橋を文殊菩薩の使いである獅子がやってくるものを阻むように護っている。
「百獣の王」である獅子は、子供が生まれると千尋の谷へ突き落とし、谷底から這い上がってきた強い獅子だけを我が子として育てるというが、そこには親子の深い絆が込められている。
「それ、牡丹は百花の王にして 獅子は百獣の王とかや 桃季にまさる牡丹花の今を盛りに咲き満ちて 虎豹に劣らぬ連獅子の戯れ遊ぶ石の橋」
歌舞伎「連獅子」では、狂言師の右近と左近が獅子の精となって、牡丹の花に戯れる様子が演じられる。白い毛の親獅子と赤い毛の子獅子が飛んできた蝶を追って舞踊する様は、まさに獅子の親子の情愛を表現している。