幕末明治の戯作者仮名垣魯文(かながき ろぶん)が、明治前期に東京を代表する劇場であった新富座に贈った引幕。明治13年(1880)6月30日に、魯文の友人である画家の河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)が、酒を楽しみつつ4時間で描き上げたという。当時の歌舞伎界を代表する九世市川団十郎、五世尾上菊五郎 をはじめとする人気役者たちをモデルとした妖怪が、葛篭からぞろぞろと飛び出して新富座の客席へと繰り出す趣向が描かれている。個性溢れる絵師暁斎の作品としても、引幕が保存された稀有な例としても、非常に興味深い。