平成の世、秋田鹿角郡に八之太郎という頑強な若者がいた。
ある日、山で三尾の岩魚をつかまえて食べたところ、どうしたことか咽が焼けるように渇き、谷川をせき止め水を七日の間飲み続けた。
すると、そこに青く澄みきった美しい湖ができて水面に写る我が身は大蛇と化していた。
そして、八之太郎は十和田湖の主として住みついた。
やがて百余年の後、藤原氏の流れをくむ「南祖坊」という僧が神の啓示を受けて現れる。
そして二人は十四日間もの激闘の末、八之太郎は敗れ秋田の八郎潟に逃げ延びる。
その戦いによる鮮血は、中山・御倉の両半島を真っ赤に染めたという。
こうして、南祖坊が十和田湖の主となったのである。