秋景と冬景をあらわしたこの作品は、本来春景と夏景を加えた四幅からなる四季山水図のうちの二幅にあたる。残念ながら春景と夏景は大正の震災で焼失している。 画面中央左寄りに山と樹木を配し、遠景に二隻の帆船、手前に船を引く漁師たちの姿を描いた右幅が秋景、雪を頂いた山、漕ぎ出す船の右に茅屋を、左に停泊する帆船を描いた左幅が冬景にあたる。 筆数を抑えた簡潔な画態、蕭条とした余白の広がりは、大徳寺真珠庵客殿上間襖絵《山水図》に極めて近い作風を示す。この襖絵は、古来より曾我蛇足作と伝えられるが、「蛇足」は曾我派が代々用いた号である。近年では、曾我派二代目の夫泉宗丈をその作者にあて、本《山水画》二幅の作者を同一人物とする説が有力である。 本作品は、周文画からの多様な展開を示した15世紀末の室町水墨画にあって、周文画の「幽寂」「枯淡」といった表現に通じるところがある一方で、異なる展開を示している点が注目される。曾我派水墨画の作例として、本作品は極めて重要である。