橋本平八は、東西両洋の思想が混交した独自の世界を築いた。この「老子」のように、平八には、東洋的なモチーフを主題にした作品が少なくない。また、彼が江戸時代の造仏聖・円空(1632-1695)に心酔したり、東洋的なアニミズム的傾向を持っていたことも知られている。しかし、彼の木彫はそうした日本・東洋の伝統だけから生まれたものでもない。平八作品の肉付けや空間構成は、明らかに西洋近代彫刻の影響を示し、また彼は西洋神秘思想にも強い関心を寄せていた。平八の作品は、東洋と西洋、二つの文化をいかに消化するかという近代の日本人に与えられた課題に対する一つの解答でもある。